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量産型からの大切なお願いです。

13年前に製造された・・・・
ではなく。


ども。うにです。

6年もなんも言わんとやってきたと言うに
なんか一度語ると次々色々な事に考えを表明しなくちゃいけない気がしてくるのは何故なんだぜ。

ええと以下。


最近、というか最近問わずですが。
マトメサイトみたいなものに書いたものが乗ってますよー
ノシ

みたいなご意見を頂くので個人的な意見を書いておくです。
こんな事を言う権利があるのかとか
そう云う議論は置いておいてごく個人的な意見として。

個人的にはこういう風に思ってるです。

スレッドに明記されているまとめサイトはもう好きに載せて下さい。
前にも書きましたが、2chは過去スレが消え去る為、
それを保管するサイトはSS書き、読みにとって必要不可欠なものです。
俺の使ったトリップで落としたそのままが保管されるのであれば
感謝こそすれ何をかという話です。

うちのHPをリンクする必要とかそんな事は一切思った事もありません。
まあ無論、営業的な意味でね。リンク張ってもらえれば嬉しいですが。
リンク張って!みたいなのは皆無です。
これはある意味スレッドによるまとめサイト様には(俺にとって)
すこぶる公的な意味合いがあると思うからです。

それに対して。
スレッドに明記されていないまとめサイト様に関しては個人的には
教えてもらったら投下したその話にリンク張ってくださいとお願いしに行っています。
2つ意味があって、1つ目はスレッドによるまとめサイトではないからです。
公園で大道芸をした場合、それは公園に来ている観客に見て貰う為であって、
勝手にビデオ撮って、よそで上映しないでね。
してくれるなら元としてうちのHPを明記して欲しいなぁっていう意味ですね。
もう一つは(これも似てるんだけどより個人的な意見として)
そのスレッドに書いたものって言うのはなんていうのかな。
上手く言えないですが書き手ってあんまり関係ないのかなと。
例えば剣は寝取られっていうカテゴリーのスレッドで書いたのですが、
スレ住人の人にとって俺が書いたかどうかはあんまり関係なくて(当たり前)
その話が面白かった、面白くなかった。だけの話な訳で、
無論俺もそう云う場所だと思って落としているわけです。
そのスレッドに落としてそれ読んだ人がHitsや琥珀や35人目も読んで面白い。
と言ってくれればそれはそれに越した事はない訳ですが、剣落とす時に
Hitsや琥珀や35人目も読んで欲しいとは一切思ってません。
(まあ書き終わった後宣伝はしますが。)
投下行為についてはそのスレッドでそのものがどうだったかという評価をされれば十分。
そう思っていますし、まあそれが当たり前。

でもですね。
ぶっちゃけ。
よそのまとめサイト様に格納されるのであればそれだけでは不十分です。
特にそういう所では俺が落とした際のスレッドも明記されておらず、トリップも明記されてなかったり
2ch由来と書かれてすらいなかったりします。
そうすると俺の事、探せないでしょう。
うにだって前の奴一個読んで興味持ったならどうせなら他も読んでよ。と思います。
剣読んで興味持ったらHitsや琥珀も読んで。と思いますし、逆もしかりです。

俺のを格納した事によってそのまとめサイト様に何らかのいいことがあったか寧ろ逆だったか。
俺の書いたものに価値があるのか。
そう云うことは置いておいて武士は相身互い。
格納はオッケーですが、読んだ人が興味を持ったら他のものも読めるようにはしてくださいな。
出来ればすこぶるわかりやすい方法で読んだ人がぴょっと飛べるように各話に。
と思っています。
うちからもリンクするしさ。仲良くやろうぜ。と。まあそんな感じで。

ですので教えてもらったらここに本体があるので是非リンク張ってくださいなとお願いしに行っています。

基本的にそう考えておりまして。
例えばリンク先の萌えコピさんや萌えちゃんねるさん、2chエロパロ板SS保管庫さん等もそうです。
無論皆様昔から素敵サイトと思ってましたしこの前書いたように萌えコピさんなんかは今でも投下先としても魅力的な場所だと思っていますが
出典元の掲示がされるとは限らないとか、スレッド由来ではないとか、
後そん時萌えコピさんだとなんか殿堂に乗せるかどうかとかで揉めてたとか色々ありましたが。
まあ概ね上記のような理由で萌えコピさんや萌えちゃんねるさん、2chエロパロ板SS保管庫さんには
前にリンクやら削除やらをお願いしたりしてます。
いろんな人が投稿できるとこですし今どうなっているかは知りませんが。
(この前書いた悪戯で大騒ぎは萌えコピさんに直接投下なので関係なし。)

と、まあつらつら書いた訳ですが。

ここまで書いといてあれですが
ぶっちゃけ正直、個人的には体験談系統はどっちでもいいです。
上みたいにこうあって欲しいなとは思いますが俺の書いたものが
アダルト広告バリンバリンのまとめとは名ばかりな感じのそれこそどこか別のまとめサイトからランダム
に貼り付けてる感じのブログに出典元非明記な上にトリップ、投下日時すら明記されず落とされてても
おお。こんな所で出会ったね。の一言です。
願わくばせめて管理人さんが読んで何らかの感想を持ってくれた事を願いつつ。

ノリで話しかけるように書くっていうのと時間掛けないっていう書き方にもあるのでしょうが、
もっと言えば体験談風書き手なんて世の中そうは多くなく、
しかも続ける人間もそうはいないだろって事を知っているからです。
あんまり顔も見えず、HP持ってる人間なんてそんな見た事無い。
(ケンジとハナコの淫乱日記みたいのはいっぱいあるけどそういうのは除くのは判りますね。)
俺ぐらいじゃなかろうかと思うくらいですし、それなら結構どうでも良いです。
俺のやってるこれは全体から見ればごくイレギュラーなものなのだろうと。
であればそこに良識だの俺ルールだのを求める気はありません。
探す人は探すだろうし。


でもですね。SSはちょっと。
SSは絵描きさん程ではないにしろ人口も多いですし、書いたものに愛着を持つ書き手さんが多いです。
自分が作ったプラモデルのように、描いた絵のように、作ったソフトのように大事に思っている人が多いです。
俺も書き散らすタイプではありますが自分自身でキャラクターも作ればストーリーも作る訳ですしそれなりには持ってます。
つまりこういうのを書くという事を趣味とする人が沢山いる、ルールのある世界な訳です。

俺も含めへったくそから入って、情熱と根性と好きこそもののの精神で頑張ってる人も多い訳です。
もしくは今現在そうやって始めたばかりの人も。
そしてそういう風に好きな事をやっている人はそれなりにナイーブに自分の作ったものを捕らえており、
その人の考え方というものが存在します。
俺なんかは結構どうでもいい派な方ですが、もっとずっとナイーブな人も多いです。
特に始めたばかりの人とかは。

そしてそういう人はそういう自分の作ったものを扱われた際に踏みにじられたと思うと
嫌になったり、悲しくなったり、場合によっては書く事すら嫌になる人もいます。
叩かれて去るのは情熱の問題かもしれませんが、
そうじゃない部分で始めたばかりの人が去ることはこのこの趣味全体に取って良いことではありません。

ですのでそれなりにルールが必要ですし、
先程の武士は相身互いじゃないですがある程度良識は必要だと思っています。
殺伐であれば良いという訳じゃありません。
うにとしても体験談風と違い、どこにでも好きに貼られてもまあいいやとは言い難いです。
(SSとの切り分けが難しいので今は一律に考えてますが)

そういう意味で言えばSS書きはSS書きのある程度(幅があるとはいっても)
統一意思のようなものがあり、体験談風の話とは又違った文化圏があることを理解してもらいたい。

無理を通して道理を引っ込ますつもりも
まとめサイトの有用性を否定するつもりは全然ありません。
まとめサイトの方はまとめて何ぼでしょうし、
そして寧ろ俺だってユーザーとして色んなまとめサイトをうろうろします。
しかしネタ元からコピーする形でのまとめサイト、コピーブログの方においては
書き手のそういう部分は踏みにじらないで欲しいし、出来るだけ我侭も聞いて欲しい。
とそう思うわけです。
これから糞面白いものを書く奴がいるかもしれないのです。


せめてここからコピーしたよ。ここがネタ元だよ。ネタ元のHPだよ。
そういう明記ととりやすい連絡方法はお願いしたいものです。

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# by obtaining | 2008-09-25 17:29 | diary

更新予定ではなく

無かったんですが。

最近結構来たWEB拍手に返信
跡形もない夜空ってうにだよね。というご意見が。

すいません。
それ(跡形もない夜空)が何を指しているのかさっぱりなのですが
多分俺じゃないと思います。

いや、何かわからないからもしかしたら俺の昔書いたものが
そう云う名前でどこかで落とされたとかっていうのは考えられるかもですが。

でもなあ。
跡形も無い夜空ってタイトルならそう云うフレーズがあるんだろうけどそんなフレーズ書いた記憶が無い。
琥珀の頃なら・・・んー。でもあれ酒場の話しだし夜空なんかないしな。
何だろう。

まあそんな感じで。


追記・

判った。
俺じゃない。
 ヒント:ペニス

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# by obtaining | 2008-09-22 14:19 | diary

剣3 Destruction その3

@@

振り向いた瞬間、そこにアイスベルクがいた。
何も身に付けていない素裸のまま、扉に手を掛けてこちらを見ている。
鍛え上げられた上半身をてかてかと汗でぬめらせたまま、アイスベルクは俺の事をじっと見詰めていた。

サクヤの中で達してから来たのか、一物はやや萎びていた。
萎びていてもなお隆々とした大きさを保ってはいたが。
その上にある陰毛は激しく濡れているのかいくつかの塊になっている。

「やめておけ、ご主人。」

その言葉は重みを持っていた。殺す事を生業をしている人間の重み。
恐らく俺の持つ剣など視界にも入っていないのだろう。

「ご主人に感謝しているというのは何も誤魔化しや嘘ではない。」

「十分に、十分にした筈です。俺も、サクヤも。サクヤ、サクヤは全てを!」
アイスベルクの言葉を遮るように俺は叫んだ。
剣を構えてアイスベルクに向ける。
アイスベルクはそれが見えていないかのように俺に向けて一歩踏み出して言葉を続けてきた。

「どの町もどの町も変わらない。陰気な顔をして、モンスターに襲われているというのに何ら打開策を見出せずにいる。
そういう町に俺達は行く。そういう町に行って、モンスターを殺す。
手当たり次第、出来るだけ見落としの無いよう、根こそぎモンスターを絶やす。」

「これ以上、これ以上サクヤに無理はさせられない。これ以上は無理です!これ以上は私には、サクヤには。」

「Mutでの最も多い死亡理由は何だと思う?
腕利きの奴等が揃っているからな。モンスターに殺される奴は殆どいない。
いないわけじゃないが数は少ない。じゃあ何で死ぬと思う?
面白い事に多くの者は自分で死を選ぶ。自殺だ。自殺だよ。
不思議な事に奴らは逃げもせずに首を括る。
しかも大抵の場合、前兆は殆ど無い。
ある日突然、どこかの町の宿屋で夜の間にひっそりと首を括る。
朝になって酔いつぶれてるのかと仲間が部屋に入って初めて気が付くって訳さ。」

「それがどうしたのです?私には関係ない!」

「俺が思うに、人は明かりに飢えるのだよ。暗い部屋に灯す灯りではなく、太陽の明るさ、明かりに飢える。
モンスターでも何でも命を奪えば明かりは消える。そして明かりの消えた部屋では人は長くは生きられん。
Mutでは俺は古参に入るからよく判る。剣を振り回し、実力をつけても暗闇は人間には絶対に耐えられん。」

「私には関係ありません。」

「モンスターに襲われている町には明るさというものが無い。
金はあっても、そこには死と暗闇しか見えない。
でも旅をしていれば偶に会える事もある。
俺達にとっては貴重な明かりが。」

「サクヤは勇者様とは違うのです。絶対に、絶対に」
剣の重みが腕に圧し掛かる。両手がブルブルと震えた。

「明かりというのはどういうものだか俺にも良くは判らん。でも会えば判る。
サクヤは明るい。物思いをしていても忘れずにいる笑顔、楽しそうな仕草。
俺から見れば小さな事に感じているであろう喜び。
花が好きだとか、この宿屋の周りを、そして町中に花を植えたいなどという雑談。
時に我々の目を盗むようにしてご亭主に向ける笑顔もだ。
俺達が持っている剣と血の世界からは遠く離れているかもしれない、
がそれこそが我らを生かす貴重な明かりだ。
判れば俺達はそれを大事にする。それに比べれば金など物の数にも入らんのだよ。」

アイスベルクがもう一歩こちらに歩み寄る。
「だが、我々が感謝したいと言ったのはそれだけではない。
ご主人にもそれがあった。
ご主人は気付いていないかもしれないが、この宿屋には明かりがあった。
酒が美味い、料理が美味い宿屋は王国に数あるだろうが、
我々がモンスターを狩った後に戻りたいと思う宿屋はそうはない。」

「ご主人は我々の話を聞いてくれたな。酒を飲みながら話す馬鹿話を。くだらない手柄話を。
普通は嫌がるものだ。命を奪う話などな。
興味深げに聞いていてもその奥にはこちらを蔑んだ感情が見え隠れするものだ。
いいからお前らは早くモンスターを狩れ。とそう言いたげな感情がな。
しかしご主人はサクヤの事があったにも拘らず我々の話をきちんと聞いてくれた。
そこには裏表がなかった。少なくとも我々はそう思った。」

「くだらない事だと思うだろう?何が明かりだと、そう思うだろう。
しかしそんなものだ。我々には町の人達が本来持っているであろうそれすら与えられん。
我々にはそれが必要なのにも関わらずな。」

もう一歩踏み出す。
既に俺の掲げた剣先はアイスベルクの胸元ぎりぎりに迫っていた。

「我々はご主人に感謝している。いい町だった。救いがいのある町に出会ったのは初めてと言っていい。
だからもう少しだけ夢を見させて欲しいのだよ。
次の町に行けばサクヤは安全な方法でこの町に戻す。
その剣を振り回しても無駄な事はご主人が一番、良く判っているだろう?
ここで我々にご主人とサクヤを斬るような事をさせるな。」

剣先がアイスベルクの胸元に付く。

「ご主人が死ねばサクヤも死ぬだろう。それはご主人にも判っているのではないか?」

このまま力を入れれば若しくは。
と考えた瞬間、剣とアイスベルクの言葉が重く、重く両手に圧し掛かってきた。
独りでに、まるで何かの魔法を掛けられたかのように剣が手から落ちる。
重い音を響かせながら床へと落ちた。

そのままアイスベルクの足元へと跪いた。
アイスベルクの下腹部が眼前にある。
サクヤの、サクヤの。

「せ、せめて教えてください。次の街とはどこの」
「教える訳にはいかん。Mutの活動は全て機密とされているからな。」

両足にすがりつく様に両手を伸ばした。
「お願い致します。どうか。どうか。お願い致します。」
「心配するな。ご主人。良い選択をした。ご主人も、サクヤも斬りたくはないからな。」
「お願い致します。どうか。どうか。どうか。サクヤをどうか。勇者様お願い致します。」
「心配するな。ご主人。何も心配する事は無い。
町を守るのが、ご主人のような善良な市民を守る事が、我々の務めだ。
ご主人はサクヤに言いきかせるだけで良いのだ。」

アイスベルクの裸の足に両手を掛ける。
顔を上げ、アイスベルクの顔を見ると笑ってはいなかった。

「お願い致します。どうか。どうか。どうか。お願い致します。」

今日が最後のはずだった。
取りすがった。
今日が。今日が。
全ての。

ハルトに貫かれたのだろう。
食堂の方から高いサクヤの声だけが聞こえて。
俺はアイスベルクにすがりつきながらゆっくりと両目を閉じた。

@@

さすが歴戦のと言うのだろう。勇者様達はあっという間に出発の準備を整えた。
こちらが用意するような物は殆ど無かった。
研ぎ澄まされた武器防具はすでに何種類も用意され、
旅に必要な品物も勇者様達はいつの間にか自分達で整えていた。
朝には全て旅の支度が整っていたのだ。

それに比べてサクヤの仕度は大変だった。
そもそも街の人間で旅をした事のある者などそうはいない。
ましてや女の身には細々と必要なものがあり、旅仕度は想像以上に手間取った。
サクヤも俺も必死に仕度に飛び回り、殆ど会話らしい会話も出来ない位だった。

かえって良かったのかもしれない。
そう思わなくも無い。
サクヤに伝え、それを信じているサクヤを前に、俺が何を言えたか。

ようやく準備が出来たのがつい先程。
別れの挨拶の時間はもう殆ど残っていなかった。
出発の準備を整えたサクヤと宿屋の玄関で向かい合う。
勇者様達は外にいる。サクヤが出る前の最後の時間だった。

「勇者様達のお世話が終わったら、すぐ戻りますから。」

一睡もせずに考えていた。
最後の会話かもしれない。そう覚悟は出来ていた。
勇者様が約束を守ってくれるのか。
守ってくれるのではないかと言う気持ちと、
アイスベルクの、ハルトの乾いた闇の穴のような目を覗いた時の気持ちが交互に胸を去来する。

手はなかった。
どちらにせよサクヤが無事でいる事だけを考えるべきだった。
サクヤには希望を持って、そして自分が正しい事をしているのだと、
そう思ったままでいて欲しかった。
ずっと。そう。ずっといつまでも。
たとえ、たとえそうだったのだとしても。
でも。
サクヤの言葉に頷いてから、俺はサクヤの顔を見た。

「帰ってきたら、俺と一緒になろう。約束してくれるね。」

口に出たのはそれだけだった。
サクヤはじっと俺の目を見ている。そしてゆっくりと頷いた。

「たったの1週間位だそうですから。
頑張って出来るだけ早く、冬真さんの所に走って帰ってきます。
冬真さん、その時は私を迎えに来てくださいね。
私、きっとその時は冬真さんに早く会いたくって大急ぎで走ってるんですから。
ちゃんと迎えに来てくださいね。」

そう言って、にっこりと笑う。
その笑顔に、俺も笑いかけた。
そして笑ったまま、俺はゆっくりとサクヤに告げた。

「うん。サクヤがそう言ってくれて嬉しいよ。なぜなら僕は君を愛しているからね。
 初めて会った時からそうなんだ。」

俺がそう言ったその瞬間、気丈に振舞っていたサクヤの目に涙が溢れるのが見えた。
そうしたままこくこくと頷いている。
そしてサクヤは小さく叫ぶように声を上げた。
「冬真さんのお嫁さんにしてくれる?」
「勿論だ。」
サクヤの頭にぽんと手を載せると、サクヤはしゃくりあげながら声を上げた。
「本当に、約束してくれる?」
「約束するとも。」
ゆっくりとサクヤに笑いかけて肩に手をかける。

「いつまでゆっくりしている。行くぞ。」
痺れを切らしたように叫ぶハルトにむかってゆっくりと頭を下げる。

「ただ今準備が出来ましたから。」

そして、俺は感情の無い目でこちらを向いている勇者様達の方へとサクヤを送り出した。

@@

それから、ずいぶんと待った。
ずっと、ずっと俺は待った。

@@


これを読んでいるのは誰だろうか。
とりあえずまず、お詫びを申し上げたい。
これを読んでいるという事は、私が皆に迷惑を掛けたという事だと思う。
若しくは今かけているその最中かもしれない。いやきっとそうだろう。
迷惑を掛けた事、とりあえずまずそれをお詫びしたい。

失礼ついでに幾つかお願いがある。
墓は街の無縁仏で構わない。
但し、遠縁に国軍にいるフェルナスという若者がいる。
最近は会っていなかったが、子供の頃は時々遊んだりもした。
可能であればこの事を伝えてもらえればと思う。
もし何か形見に欲しがるようであればあげてやって欲しい。

店の借金は殆ど残っていないと思う。
いくらかの売り掛けが残っているが、それは金庫の中の金でやり繰りして欲しい。
そうだ。大工のヤンには賭けで負けた金があった。
大した額じゃないし誤魔化しておこうとも思ったがどうせだ。それも返しておいて欲しい。
あと武具屋のリスクには酒の売り掛けを残したままだ。奴は飲みすぎるきらいがある。
奴の為にもきっちりと取り立ててやってくれ。
それから。
二人に今までの友情に感謝すると伝えて欲しい。
とても楽しかったと。

最後に、お願いがある。
サクヤが街に戻る事があったら、俺は街から出て行ったのだと云う事にして貰えないだろうか。
嘘を吐くのは心苦しいかもしれないが、あながち間違いでもないだろう。
俺は何処かに行ったと。そう伝えて欲しい。
曲げてお願いしたい。
そうだな。何処かの未亡人とでも手に手を取ってとでも云う事にしておいて貰って構わない。
そしてその後の事も、是非悪くならないように計らって欲しい。
彼女が幸せになれるように。
もし誰かが宿屋を続けるのであれば彼女はとても優秀な従業員だ。
雇ってあげて欲しい。
幸せにしてあげて欲しい。
素敵な娘だ。
幸せに。誰にも負けないくらい幸せに。

重ねて、迷惑を掛ける事を本当に申し訳なく思っている。
これが街の皆にとって大きな問題とならなければいいのだが。

恐らく金庫の中にある金であらかたの始末は付けられると思う。よろしく頼む。
それとは別の話だがベッドの下に金貨の入った袋がある。
もし金庫の中にある金が余った場合はそれも含めて、
これら残ったものの全てを全額、町に寄付する。
町の、皆の為の、何がしかの役に立てて欲しい。
使い道は任せるが、出来れば・・・そう、
広場に花を植えたり、そういう事に使ってもらえればと思う。

俺は野暮だからうまく思いつかないけれど。
皆が笑えるような皆の役に立つような、そんな何かに使って欲しい。

@@
そこまで書いて俺はペンを置いた。
深呼吸をしてから今まで書いた部分を2度読み直す。
必要な事は全て書いてあった。
少し考えてから最後に俺はまたペンを取り、紙の上を滑らせた。

サクヤともう少し、笑い合っていたかった。
もう少し笑い合う時間があって、そして俺に剣が

その文字を読みながら暫く考えて、やはり思い直して俺はその2行を消した。
ペンを仕舞い、手紙をきちんと畳んでから封筒にしまい、封をした。
宛先は書かず、机の上に置いておく。

2度、部屋を振り返った。
もう背中にコツンと当る頭もなく、機嫌良く歌うサクヤの声も聞こえてはこなかった。
この部屋には誰もいなく、そして想い残す物ももう無い。
部屋の中は、俺達の宿の中はからん、としていた。
勇者様が出立して1年が過ぎた。
勇者様の言葉を信じてみようと決めていた一週間が、一ヶ月が、そして一年が過ぎたのだ。

一度頷き、机の横に立てかけてあった剣を持ち上げた。
鞘から抜くと幾度にも渡って砥ぎ上げられた所為か、ぴかぴかと光り輝いている。

綺麗な剣だった。
モンスターを倒す事もそして誰かに切りつける事も無かった剣だったが、
それは綺麗に研ぎ澄まされていた。

剣を振り上げる才能は無かった。
モンスターの出現に悩まされる王国と街の為に出来る俺の役割は
剣を持ちモンスターに立ち向かう事ではなく、モンスターを倒す者達の協力をする事でしかなかった。

俺は小さな町の宿屋の主人だ。それも仕方が無い事なのだろう。
でも自分の行為が、そしてサクヤの行為が何がしかの役に立てたのだと信じたい。
全くの無では無いのだと。無かったのだと。
そう信じたい。

もう一度振り返った。
サクヤ、と呟くと温かい感情が胸の中に湧き上がる。
特別な名前だと思った。
もう一度呟く。
やはりぼうっとした温かい感情が胸の中に湧き上がってきた。
胸に手を当てる。

ゆっくりと目を閉じた。
目の前に新品の馬車に乗って俺とサクヤが旅をしている光景が浮かんできた。
ここ一年、ずっと考えていた光景。
二人でよく話していた、旅をしたいという夢。

サクヤはよく似合う白いブラウスを着ている。
「どこに行こうか?」
「海が見てみたいの。いい?」
俺の問いにサクヤは隣でにこにこと笑いながらそう答える。
答えながらゆっくりと手を伸ばして嬉しそうに風に乱れた俺の襟を直してくる。

勿論良いとも。

「じゃあ、南に行こう。泳ぐことだって出来るぞ。」
そう言って、ふたりとも思わず笑ってしまう。
このうえなく、すてきな気分になったからだ。

目を開けてもう一度、もう一度だけ振り返った。
そこにはしんと静まり返ったそれだけがあった。
明かりの無い部屋が。

恨みはなかった。
サクヤが幸せでいてくれる事だけを考えていた。

床に座り込む。
息を大きく吸う。
俺は剣の鞘尻を床に付けてから剣先を喉元に突きつけて。

そして思い切り前に体を倒した。

@@

その後の事を書こうと思う。

その後100年が経過したが、王国からモンスターは駆逐されていない。
多少の一進一退はあるが王国は持ちこたえ、しかし勝利を収めてもいない。

宿屋の店主には身寄りがいなかった為、協議の結果宿屋は町長の甥のフォンベルクが継いだ。
王国にとって旅は依然として危険なものであり、それ故この王国では小さな街にも宿屋の存在が求められている。
だからこの街の宿屋もそれなりに繁盛している。
フォンベルクは子供を3人作り、今はその長男の子供がこの宿屋を経営している。

10年後、30年後、60年後にそれぞれMutの数人がこの街に来て数ヶ月に渡って再度モンスター狩りを行い、
何れも一定の成果を収めた。
それぞれ痛快な冒険譚あり、悲惨な物語もある。
でもそれは今話すべき事じゃあないし、ここでは語らない。

サクヤがこの街に戻る事はなかった。
今に至るまで、この街の人別帳にサクヤという名前が書き加えられた記録は残っていない。

街では年に一度、祭りの前日にイベリアスの種を撒く。
この儀式がいつから始まったのか、記録は特に残っていない。
最初にモンスターを退治した勇者を称える為だとかモンスターの犠牲になった市民の追悼の為だとか
或いは勇者に恋をした町の少女が好んでいた花だからだとか諸説あるが、いまや定かな事は不明だ。

だが街の人はこの儀式を気に入っている。
その種はその儀式の2ヵ月後に綺麗な白い花を咲かせる。広場一面に咲く白く小さいイベリアスの花。
夏の陽だまりの中、街の人たちはその広場に集まって芝生の上に座り込んでは仕事の疲れを癒したり、
昼寝をしたり、収めなきゃいけない税金に不満を漏らしたり、今夜の夕食の話や恋の話、そんな色々な話をする。

街の人達は以前からずっとずっと、今に至るまでずっと温厚に平和に暮らしてきた。
今までも、そしてこれからもそうだろうと思う。
王国を愛し、文句を言いながらも税を払い義務を果たす。

正しい市民でいること。これがこの街の誇りで。
そして確かにその通りに、いつまでも平和に時は巡り続けている。



剣/Estranged/Destruction

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# by obtaining | 2008-09-19 23:16 | document

剣3 Destruction その2


=*=*=*

「よく締まっていたぞ。サクヤ。」
アイスベルクはサクヤに後ろから挿入したまま腰を押し付けるようにしている。
サクヤが達したにも関わらず、いや達したからなのか
アイスベルクの口調にはまだ余裕の色があった。

「いやぁ・・・嫌です。勇者様。」

「まだ締めてるな。」
声音に笑いの色を含ませながらからかうようにアイスベルクがそう言うと
サクヤは床に顔を突っ伏せるようにした。
恥ずかしいのだろう。首筋が更に赤く染まる。

「か、身体が勝手にしているのです。わ、私がしているのでは…」
「そうか、勝手にしているのか。じゃあ締めて見せろ。この前のようにやってみろ。」

「やあ・・そんな・・・」
サクヤが頭を振る。
この前、との意味は判らなかった。サクヤとアイスベルクの間にそう云う事があったのだろう。と言う事だけは判る。

アイスベルクは動こうとしない。
と、サクヤは諦めたように吐息を漏らした。
「んっ」
と声を漏らすと床に垂らせた手を握り締めた。
腰に力が入ったようにアイスベルクのものへ更にくっ付けるようにサクヤの腰が動く。
「や・・・恥ずかしい・・・」
アイスベルクが何も言う前からサクヤは声を漏らした。
更に腰を押し付けるように動かす。
先程とは違う、更に淫らな光景だった。
アイスベルクは一言も発せず、腰は微動だにしていない。
サクヤが自ら腰を動かし、アイスベルクの物に自分のそれを纏わりつかせるように動かしていた。

「やぁ・・・恥ずかしい・・恥ずかしいです。見ないで・・・」
腰を動かしながら耐えられないようにサクヤが声を漏らす。

「いいのか、サクヤ。」
「動いて、動いてください。勇者様。いやぁ。凄く恥ずかしいんです。」
サクヤが頭を振る。
ハルトの手はいつの間にか俺の手から離れていた。
こちらからはサクヤの腰が動いているのが判る。

「サクヤが動かしているんだろう。」

「ああ・・・酷い・・勇者様が・・・んっ・・・ご命令したのではないですか・・あっ」

「店主の前では見せたくないとお前は俺に言っていたな。」
アイスベルクの声にサクヤが喘ぎながら首を上下に振る。
「はい。あっ・・・ありがとうございます。勇者様。んっ・・・」

「なら今は問題ないだろう?正直に言うんだ。サクヤ。」

「ああっ・・・あんっ・・・」

「さっきより締まってるぞ。いいのか、サクヤ。」

アイスベルクの言葉が引き金になったのか、サクヤがあああっと声を上げながら首を前にがっくりと折った。
絞るような、しかしアイスベルクにだけ向けた言葉をサクヤが発した。
「いいっ、良いんです。凄く、凄く気持ち良いんです。だから恥ずかしっい!いや・・・あっ・・・」
「気持ち良いのか?」
「あっ…は、ん・・・はいっ…さっきからの激しいので・・・あっ気持ちいいです。
凄い、凄く・・・ああ・・・あっ勇者様のが、わ、私の一部になったみたいなんですっ!」

「動いてやろうか。」

そこまでを聞いてアイスベルクは腰を大きく引いた。
サクヤとアイスベルクとの接点がぬとぬとした液体で覆われているかのように重い水音を立てる。
サクヤがアイスベルクによって濡らしたその液体の音が。
「ああっ…お、お願いしますっ・・勇者様っんっ!ああ・・・抜かないで・・また、またいやぁ・・・」
サクヤの声に合わせてアイスベルクが腰を突き上げるように動かす。

「あーーーー・・ああっ!だめっ!声、あ、ああっ!・・・あんっ!」
「どうだ?いいのか?」
「凄い、凄い。太くて・・・ああ、勇者様・・・だめ、だめですイヤあ・・・あっ!。」

そのままアイスベルクがリズミカルに動き始める。
「あっあんっ!あっあっあっもう、もうダメになっちゃう、ダメになっちゃいます!いやあ!気持ちいい、気持ち良いんです。そこダメぇ!」
サクヤが首を振ったことで見えた表情の悩ましさに一瞬見とれた。

「締まってるぞサクヤ。イかせてやる。判ってるな。サクヤ。」
アイスベルクは唸りながらがくがくと腰を揺らせる。

「あああああ、イク、あたし、ああ、だめイク!」

「ご主人に頼みがある。」
耳元で囁かれた言葉にビクンと背を反らせた。
はっと振り返るとハルトが俺の顔を覗き込んでいた。
黒く瞳孔の大きな目。
ハルトは低い声でゆっくりと俺にたいして言葉を放ってきた。

「明日は出立だ。ご主人、世話になった。」
「い、いえ。何のお世話も出来ませんで…」

「あっダメです。あっ凄い、ああっ勇者さ、勇者様。早く。あっ・・・お願いしますから。んっ!」
サクヤの方へと向かう視線を無理やりハルトに向ける。
唇を噛み締める。
「十分なお世話をしたのをご主人は判っているだろう。」
「いえ・・・」
認めるつもりはなかった。俺が、サクヤがしたのは税であり、義務だ。
税に十分も満足もない。

「はは。謙遜する事はない。ご主人。でだ。少し我々も考えた。我々にご主人に対して出来る事が何か無いかな。と。」
「そんな、町をお救い頂けるだけで十分でございます。」
ある意味本心だった。その為にサクヤは。
「いやいやいやいや。それはそれ。それはそれだ。」
そう言うとハルトは机の上にどんと鼠色をした大き目の袋を置いた。
何かがずっしりと入っているのだろう。重たげな音が起こる。

「いやっんっ!んっ!んっ!また、また、ああ・・・あんっ!」

「我々の気持ちだ。受け取ってもらいたい。」
ハルトが眉を持ち上げ、袋を指差す。
ハルトの声に促され、袋を開いた。中を見る。
「っ!!受け取れません。勇者様。お代は十分に頂いております。
ここでの勇者様の掛かりは王国から補填される事となっておるのです。」

袋の中には実際、見たことも無い位の大量の金貨が入っていた。
ぱっと見ただけだが宿屋の売り上げの2年分位にはありそうな量だった。
いくらなんでも多すぎる。

「更になんでも我々が泊まった宿というのは箔が付くのだそうだな。」
「そうでございます。その上このようなものを頂く事は出来ません。」
笑顔で袋から手を離す。
嫌な予感がしていた。
これを受け取ってはいけない。
これを、受け取ってはいけない。
丁重に頭を下げた瞬間、その手を掴まれた。袋に押し付けられる。

「ご主人。我々は町の人々とは違ってな。金などいらんのだ。」
その口調に思わず顔を上げる。
と、ハルトは頷いてきた。

「王国は我々が町に着く度に金を寄越す。これで準備をしてモンスターを殺せ、とな。
しかしこの町もそうだが、我々Mutから金を取ろうという奴はおらん。
食べ物、飲み物その他必要なものに関してはどの町も殆どが支払いを免除する。
払うと言ってもそうだな。武器や防具の手入れ、精々がその辺り位のものだ。」

「それはそうで御座いましょう。勇者様のおかげで、町が救われるのです。」

「貰えるものは貰っておけ。という話かもしれないが。」
「そうで御座います。」

「だがな、貯めておいてどうなる。ご主人。」
俺の手を掴みながら冷えた声でハルトは続けた。
俺が絶句するに十分な位、冷えた絶望的な声。

「手当たり次第に殺し、旅をして殺す。しかしモンスターは根絶する気配も見せん。
鼠を追いかけているような物だ。冬に姿を見せなくなっても春にはまた顔を出す。」

「し、しかし」

「確かに叩きのめせば奴らは暫くはなりを潜める。だが、5年もすれば又顔を出す。」
「そ、そんな」
そんな話は聞いた事が無かった。
勇者様に解放された町の住人はその後幸せに暮らしているのではないのか。

「ご主人。我々は町の人々とは違う。蓄えてもしょうがないのだ。モンスターが出れば殺しに行く。
こちらがやられるか、それともいつか奴等がいなくなるのか、それまでずっと続くのだ。」
そこまで言うとハルトはにいと笑った。
熊のような巨体が揺れる。

「だからだ、ご主人。我々の価値観は町の人とは違う。ご主人は後ろめたく思う事は無い。
ご主人はそれだけの事をしてくれたのだ。だから受け取ってくれ。な。」

そう言って無理やり袋を俺の手に握らせる。
袋はずっしりと重いどころではない。下手に片手で持ち上げたら支えきれずに床にばら撒いてしまいそうな重量を持っている。
何といわれようと、受け取る訳にはいかない様な重みがあった。
しかしここまで言われて無下に断る事も難しい。

「では、半分頂きましょう。」
「いや、是非全部受け取っていただきたい。」
「ハルト様、一介の宿屋には過ぎるお代です。」
そう言うとハルトは笑った。

「ではご主人。これでどうだ。半分はご主人が受け取る。
もう半分はサクヤが受け取れば良い。うん。」
そう言って笑う。

暫く考えてから俺は首を縦に振った。
勇者様には勇者様の価値観があるのだろう。
あまり断るのも何だった。
それにその代金に全く魅力が無い訳ではなかった。

頷いた俺に向かってそれでいい。とハルトも頷いてきた。
そしてハルトはもう一度俺の顔を覗き込むようにしながら言葉を続けた。

「その代り、という訳では無いのだが頼みがある。いや何簡単な事だ。」
「何でしょうか。」
嫌な感触がした。

「我々は明日、次の街へと旅立つ。」
「はい。」

「旅路はきつい。無論我々が旅をするのだから危険は無い。それに次の町はそう遠い所ではない。」

「はい。」

「しかし何がきついと言って旅の間は食事がな。食事だの洗濯だのとそういった部分がどうしても手間がかかる。」

すでにこの時点で俺は首を振っていた。
違う。今日までだ。
今日までのはずだ。

勇者様のお役に立つなら。いや違う、税は払ったはずだ。
十分過ぎる税を。
全てを。
町の安全の為に、町の平和の為に。

「次の町までの間、サクヤを借り受けたい。」
「それは。」
「それは、ご勘弁下さい。」

がくんと身体が椅子に沈み込んだ。
一瞬の後、自分の手から力が抜けて座り込んだのだと気がつく。
首を上げるのも重い。
血の気が引いたようになって俺は何度も首を振った。

「ご主人、何も帰さんとは言っていないのだ。旅には女手も必要。そう言っているまで。
1週か2週、精々が数ヶ月。次の街へ行けばサクヤは必ず戻す。」

首を回した。

「そら、いくぞサクヤ。いくぞ。」
アイスベルクがラストスパートのように激しく腰をサクヤに叩きつけている。
「あっ!あっ!あっ!・・・あんっ!た、逞しいです、いや、やっ・・・凄い。
んっ!また、またイきそう、イく。いやあイくっ!だめっ!
あっイク、イクうぅ・・・ああんっ!」
尻だけを叩く掲げさせられた格好でサクヤが責め抜かれている。
二人とも身体にねっとりとした汗を浮き立たせている。
もう一度首を回す。
アイスベルクが終れば、ハルトがサクヤを抱くのだろう。

それで終わりだ。それで終わりのはずだ。これで。
それ以上は無理だ。無理だ。絶対に。
「お願い致します。どうかそれはご勘弁を。」
口から搾り出すように声を出した。
精一杯口を開いているのに口から中々声が出てこない。
「どうか、どうかそれはご勘弁下さい。お願い致します。どうか。」

ハルトの顔を見る。ハルトが首を横に振った。
そこで気がついた。そのつもりだったのだ。
言う事を聞いたらサクヤは帰ってこないかもしれない。
恐怖心が全身を襲う。
サクヤが目の前で抱かれていてもいい。
それでもそばにはいた。
例え地獄のように感じられてもそこにはサクヤがいたのだ。
サクヤがいなくなったらどうすればいいのだ。

身体に力を入れた。椅子から立ち上がる。
「どうした?ご主人。」

その言葉には答えず、足に力を入れて厨房へと向かった。
厨房を通り抜け、自分の部屋兼事務室として使っている部屋へと向かう。

駄目だった。絶対に。
絶対に受け入れる訳にはいかなかった。
払うべきものは払った筈だ。

廊下が長かった。何度も、何度も往復した廊下。
お客様の為に厨房へ向かい、お客様の為に玄関まで走り、
そしてそこにはサクヤがいた。
にこにこと笑って。
悪戯っぽく通り抜け様にそっと俺の袖を握って。

部屋へと入り、剣を手に取った。
町の武具屋に旅人の方に頼まれてなどと吐かずとも良い嘘を吐いて手に入れた
何の変哲も無い薄い細身の剣。
何度も、何度も研いだ剣を。

鞘を外す。
何度も素振りをしてみた。
俺が勇者様だったら。
俺が町を救えたら。
俺がサクヤを守れたら。

俺が、俺にそれがあったら。

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# by obtaining | 2008-09-19 09:28 | document

剣3 Destruction

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剣~3話目 Destruction
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食堂からのどっという湧いた声に魚を捌いていた手を止める。
そろそろ勇者様達の酒が切れる頃だろうか。
酒樽の方へ手を伸ばして、中身を大き目のグラスに注いでいく。
丁度3杯分出来上がった所でサクヤが厨房に顔を出した。

ハッとする。
サクヤはいつもの通り、従業員用の白いブラウスに、紺色の短めのスカートという格好に茶色の前掛けを掛けるという格好をしていた。
先程と一緒だ。しかしブラウスが乱れていた。
上から3番目までのボタンが弾け、そしてそのブラウスを右手で掻き合わせるようにして厨房の入り口に立っている。
サクヤもそれは判っているのだろう。左手にトレイを持ちながら右手で一生懸命襟を掻き合わせるようにしている。

酒場が盛り上がっているからだろう。勇者様のうちの誰かがちょっかいを出したのだ。
長く息を吐いた。
未だに慣れない。当たり前だった。それが町の為であると言っても。
そして国の為であるといっても。
それでも今日で終わりとあれば話は別だった。

「冬真さん、お酒のおかわりだそうです。」
俺の顔を見て、サクヤが言う。
「そこに置いておいた。魚ももう少しで出来上がるよ。」
顔を見て、笑ってやる。

「大分盛り上がってるみたいだな。」
サクヤも判っていた。今日で終わりだと。
「・・・ですね。」
この数ヶ月間にない穏やかな顔をしていた。
「勇者様達もこの町に閉じ込められていたように感じていたみたいですから。
ずっとこの町に住んでいる私にとっては旅をする方のお考えは判らないです。」
「勇者様達の事をそんな風に言ってはいけないよ。私達の町の為に戦って下さってるんだから。」
俺がそう言うと舌をぺろっと出して笑う。
そう、サクヤにはこういう所があった。
今日は何回もそういう所を俺に見せている。
この数ヶ月のうちに薄れていたそう言う仕草を見るたびに胸の中を何か暖かいものが流れた。

何かを不安に思っていたのだろうか。
俺は信じていなかった?サクヤの事を。
そんな事はない。
サクヤが勇者様の世話をしたからといって俺がサクヤの事を信じない訳がない。
サクヤが俺から離れるなんて考えた事も無かった。

サクヤを見つめていると、サクヤは赤い顔をしてぱっと離れた。
もう一度、襟をかき合わせるとトレイを持ち直してそこにグラスを乗せて行く。

サクヤとの距離が縮まった。
思わず頭を撫でると、サクヤは薄く目を閉じた。
そのまま俺の胸に頭を預けてくる。

「今日、頑張りますね。」
「・・・ああ。」
「最後ですから。」

そうだな。という声は抑えた。
「勇者様達は明日、大変なお役目をするのだからね。」
俺の言葉にサクヤはきゅっと口を閉じた。
そう、勇者様達は西の山中にあるモンスターの巣に総力戦を仕掛ける予定だった。
数ヶ月にわたる探索、討伐の結果として。
討伐が終了すれば勇者様達は次の町へとそのまま赴く事となる。
この町へと戻る事は無い。
一つの結果を出したとしても賞賛される事も無く次の町へと行くのだという。
それほど苛烈で。
そして国に蔓延るモンスターの被害はそれほど深刻なのだろう。

「・・・その、すごく気分が昂ぶっておられるようなんです。」
俺の胸に頭を当てたまま、サクヤが呟く。
頭を撫でてやる。
「その、見ないで下さい。今日だけは。」
「判ってる。」
今までこう言う事をはっきりと言わなかったからだろう。
サクヤは驚くように俺の顔を見た。
今まで俺はサクヤに勇者様を否定するような事は一度も言わなかった。
それはサクヤの為であり、俺の為でもあった。
サクヤの行為は勇者様達への市民として出来る協力だと、俺はそう考えていた。
サクヤの行為は形を変えたある種の税であろうと思おうとしていた。
街に、王国に住まう者として、命を懸けて戦われている勇者様へ出来るせめてもの協力。
たとえ勇者様が言っていた事が詭弁だとしても。
娼婦でもないサクヤを都合よく扱っているように見えたとしてもそれでもサクヤの行為は正しいものなのだと。
決して恥ずかしいものではなく、名誉なのだと。

勿論サクヤが婚約者である俺の近くで勇者様とは言え他の男に抱かれる事に抵抗が無い訳がない。
俺も、そしてサクヤも。
でもそれは名誉なのだからと俺はサクヤと自分にそう言い続けていた。

でも頷いた。首が自動的に縦に動いていた。
今日が最後なのだと。そういう気分がそうさせたのかもしれない。

「大丈夫だよ。サクヤ。」
そう言って頷いた。
サクヤが一番だった。
俺は耐えればいい。それだけだった。
勇者様のおかげで明日、町は救われる。
明日からは違う日々が始まる。

王国にいる限り、誰もが税を払うのだ。
そしてその代りに助けてもらう。
平穏な生活を、平和な町を。
俺とサクヤが払ったそれも、そうだというだけだ。
そう、税は払い終わる。そして明日が来る。

「サクヤ!!早く酒を持って来い!!」
ハルトの声が響く。
酒場と言っても宿屋の一階の一部にある小さなものだ。
今日は勇者様貸切となっている。
声は直ぐに届いた。
サクヤはぐっと一度だけ下を向いた。
暫く下を向いた後、顔を上げた。

「冬真さんにそう言って貰えるだけで頑張れます。もういかなくちゃ。」
そう言うとサクヤはトレイを持ち直してぱっと離れた。

笑い声の上がる酒場へと向かっていくサクヤの背中を見て。
俺は厨房の奥へと向かった。

@@
「んっ・・・勇者様あっダメです。そこはあっ・・・」

1時間ほどもサクヤ料理を運び、酒を運んだだろうか。
サクヤは厨房に戻るたびに服装を変えていた。
ある時から前掛けを取られたのだろう。消えた。
白いブラウスを直接着ている為に下着が透けて見えた。
次の時にはスカートの裾を気にしていた。
俺には何も言わなかったが、下着を取られたのかもしれないような、そういう事を気にしているような仕草に写った。
でも俺に向ける笑顔は変わらなかった。

そして20分前からは厨房に戻らなくなった。
宴もたけなわとなったのか。
暫くは笑っていたような声が途絶え、そして今はサクヤの声が聞こえてくる。

「んんっ!勇者様っ!お、お部屋で、部屋に行かせて下さい。そ、そこでなら。やっ…!」
サクヤの声の度に笑い声が聞こえる。
厨房に飛び込んでくる声、そして笑い声からしてハルトがサクヤを嬲っているのか。

俺は厨房の椅子に腰掛けていた。
酒場の方へ行くつもりは無かった。
ただ座ってサクヤの声を聞いているのは思ったより辛いものだった。
一分一秒が長かった。
この夜は明けないのかもしれないなどと馬鹿げた考えが頭を過ぎる。

10分ほど前までは恐らく服を脱がされていたのだろう。はやすような声が聞こえていた
サクヤは暫く恥らうような抗うような声を上げていた。
そして5分ほど前にサクヤは貫かれたのだろう。そう云う声を上げた。

「あっあっ…あっ!うんっ!んっ…あんっ!あんっ!…勇者様っ!」
先程から明らかにリズミカルな声が響いていた。
「あっあっんっ!ダメですっあっ…部屋、部屋へ・・お願いします…あああああそこダメ・・・」

酒場の方へ行くつもりはなかった。
じっと座っていた。
「ご主人、酒を追加だ!」
酒場から響くアイスベルクのその声を聞くまでは。

暫くは動けなかった。
いや、思わず逃げ出そうとした。
サクヤにあれ程までに自信のあふれた受け答えをしたのに、俺はショックを受けたかのように動く事が出来なかった。
それでもサクヤの声は続いていた。
リズミカルな、その声。
数分間を経て俺は動いた。
お客様に呼ばれたのだ。お酒は出さなくてはならない。
宿屋の店主としての誇りを振り絞ってグラスに酒を注ぐ。

手が震えて、何度も口に出した。
「今日が、最後だ。」
「今日が、最後だ。」
「今日が、最後だ。」

3度目に口に出した時、何に恐怖を抱いているのかその時、気がついた。
ハルトがシーツを被ってサクヤを抱いていた時に酒を運んだ時とも違う。
この前のハルトに誘われての覗きとは違う。
サクヤが抱かれている、そしてサクヤが俺が来ることを知っている、
その場所へ行くのは初めてだった。
傍観者ではなく抱かれているサクヤと俺は顔を合わせなければいけない。
その場所へ。
たったそれだけで俺は震えていた。
がくがくと両手が上下に震える。

いつもは片手で持つトレイが片手で持てなかった。
もし持とうとしたら取り落としていただろう。
トレイを両手で持ち、厨房を出る。
体温が下がったように感じて寒気が起こった。
顎が震えてカチカチと鳴る。

ゆっくりと慎重に歩いた。
トレイを持ったまま、バランスを崩さないよう酒場へと踏み込む。
その瞬間、がくんと視線がずれた。
酒場の床の上で四つん這いに這い、肘をついて身体を支えている全裸のサクヤの上半身が見えたからだった。
サクヤの真っ白な雪肌が激しく揺さぶられるように前後に動いていた。
更に視線を横にずらすと、サクヤが後ろからアイスベルクに激しく貫かれている全景が目に飛び込んできた。
サクヤがアイスベルクの手でがっしりと腰を掴まれ後ろから激しく突き上げられている。
突き上げる動きの度に床に突いた両腕と共にすらりとしたサクヤの上半身がガクガクと揺れ、
艶やかな黒髪が前後の動きに合わせるように翻って動く。
更にサクヤの身体はねっとりとした汗に覆われていた。
真っ白な首には汗で襟足の毛が何本も張り付き、サクヤは激しく息を切らせている。
為す術もないようにサクヤは全身を揺さぶられ、アイスベルクの思うが侭に翻弄されているように見えた。
先程からこんな勢いでサクヤはずっと貫かれていたのか。

ぎゅうと視界が狭まり、頭が重くなった。心臓が収縮するように動く。
トレイを取り落とさないようにもう一度持ち直した。
まだ、サクヤは気がついていない。
視線を逸らす。
サクヤの服はどう脱がされたのだろうか、酒場の机の上に散らばっている。

そう、サクヤを貫いているのはアイスベルクだった。
ハルトだと思ったのは勘違いだったのか。
ふと思う。
想像している事と、実際に行われている事はいつも違った。
先程の酒を要求する声はアイスベルクのものだった。
アイスベルクは、サクヤを貫きながら俺を呼んだのか。

「あっあっ…あっ!…あんっ!あんっ!…勇者様っ!」
パン、パンとアイスベルクの腰がサクヤのそれに叩きつけられる音が響く。
サクヤは強く前後に揺さぶられながらぎゅっと目を瞑っていた。
だから俺には気がついていないのだろう。
抑え切れないような声と共に勇者様の名を呼ぶ。

のろのろと足を運び、サクヤとアイスベルクから回り込むように後ろのテーブルへと動き、トレイをテーブルの上に置く。
俺の事は目にも入っていないかのようにニヤニヤと笑ってアイスベルクとサクヤを斜め後ろから見ていたハルトに向かって、
「このような場所で。」
と酒を机の上に置きながら苦言を言おうとした瞬間、ハルトに腕を掴まれた。
「ちょっと黙っていろ。」
肝が冷えるような声で囁かれる。
普段のやに下がった顔とは違う戦士の顔なのだろう。
その声には有無を言わさない色があった。

「店主は他所へいったぞ。」

そのままハルトはアイスベルクとサクヤに向かってそう声を掛けた。
がっしりと俺の腕の掴んだまま離さない。
ハルトの座っている位置はサクヤから見て後ろ側になる。サクヤはまだ気がついていない。

「んっ!」
ハルトの声に反応したように激しく突き上げるアイスベルクにサクヤの顎が上がる。
「ああダメですっ!勇者様っ!あんっ…あっ…あんっ!お、お酒はっお酒は」

「俺が取りに行った。店主は部屋へ戻るそうだ。」
万力のようにがっちりと俺の手を掴んでいる。

ハルトの言葉に反応するようにアイスベルクがサクヤの腰を掴んだまま力強く腰を叩きつける。
「店主はいないぞ。」
その言葉にサクヤはがっくりと首を折った。
「やっ・・・・んっ・・・ダメ、ああ、もうダメ・・・!あっあっ!あっ!!」
今までとは違う声が上がる。
サクヤはハルトのその言葉を信じたのだろう。
「あああああ…激しいっ、勇者様っ!………」

アイスベルクに腰を打ち付けられる度にサクヤは黒髪をざっくりと垂らし、
下を向いた四つん這いの格好のまま明らかに耐えられないように声を上げた。
その声で判る。サクヤは今まで我慢していたのだ。
厨房にいる俺に声を聞かせないように出来るだけ耐えていたに違いなかった。
アイスベルクはしっかりとサクヤの腰を掴んだままがっしりと華奢なサクヤの身体を抑え付け、
鍛え上げられたその身体全体を使うようにして先程以上の勢いでパンパンと腰をサクヤに打ち付けている。

「よく我慢したな。」
アイスベルクの呟くような声にサクヤの背がきゅうと反った。

「あああっ・・・もうダメ、あっいく、いく、いきます。勇者、勇者様はっ」
うわ言のようにサクヤにアイスベルクが激しく動きながら声を掛ける。
「先にいけ。サクヤ。」

「ああ、あっ、あっ、そんなっ!んっ…いく、いく、あっああっ!」

壁越しでなく、直接見るのは初めてだった。
ハルトのいるこちらからはアイスベルクの叩きつけるような抽送を受けているサクヤの尻と汗、
そして真っ白な背中、時折横に振られるように動く頭が見えた。
アイスベルクがタイミングを計っていたのだろう。深く突かれたその瞬間、絶頂に達したのだろう。
サクヤがぐぐっと更に背を反らせ、首を振って。
暫く背を反らしたままの格好の後、サクヤは床に突っ伏していった。

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# by obtaining | 2008-09-19 09:27