<   2006年 01月 ( 8 )   > この月の画像一覧

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hits_sp_off 更新

(=゚ω゚)ノこんにちは。

holidays in the sun_spin-off更新

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(=゚ω゚)ノ 雪炬燵熱弁 更新

ご意見ご感想は↓
  




そして次



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「村田君。少し聞きたいのだけれど、カカオのチョコレートとホワイトチョコレートだったら君はどちらの方が好きかな?」

「村上です。」

まるで冴えない僕に学年でも指折りの秀才であり美人でもある岸涼子さんが声を掛けて来たのはそんな2月14日も程近い今日の昼休み、丁度お弁当を食べ終わった12時32分24秒の事だった。


高校3年生の2月なんて皆、卒業を前にして浮かれきっている。
大学が決まっている奴らも就職が決まっている奴らも引越しに新生活。
浮き足立っていて更には最後の遊ぶチャンスとばかりに卒業旅行の計画を立てていたりする。

目の前に広がる新しい世界に目を晦ませてはしゃいでいる。
それは良い。でもそんな皆を見ても心の中には何の感慨も浮かんでこなかった。

僕だってなんとか3流大学に潜り込んだ。
皆と同じように4月には東京に出る。
でも胸に皆のような期待はなかった。
高校で3年間も過ごせば色々なことが判る。
友達が出来ないのは詰まらないクラスの所為なんかじゃない。
環境の所為じゃなくて自分の所為なんだ。
だからどうせ同じようになる。
きっと友達なんか一人も出来なかった高校時代を繰り返すような大学生活を送るのだろうと思う。
まるで意味のないうじうじとうだうだとした4年間を過ごして、
何処か小さな会社に入り、詰まらない普通の人生を送るのだろう。
そうに違いない。

でも。

人生は何がきっかけになるか、判らないのだ。


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ということで2月14日までに書けるのでしょうか。
まず無理とみた。
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by obtaining | 2006-01-31 11:16 | document

雪炬燵熱弁

<雪炬燵熱弁>


「へえ、それで二人は付き合い始めたんだ。確か清水先輩って大学サッカーでも有名だったもんね。」
差し向かいで炬燵に入って話す。お正月特有の贅沢とも言える。
窓の外では昨晩から深々と雪が降っていて町並みは凍りついたように物音一つしない。
そんな中、暖色に彩られた涼子さんの部屋の中では珍しくローリングストーンズなんかが掛かっていたりする。

「うん。だいぶ前に清水君が大学のリーグ戦で得点王を取ったとか京子は言っていたな。残念ながらJリーグ入りは適わなかったらしいけれど。」
炬燵に座り込み、ぎりぎり座れる位まで下半身を炬燵に突っ込んだ態勢の涼子さんは蜜柑を一切れ口の中に放り込みながらもむもむと話している。
話の途中で炬燵の中から脚を蹴飛ばしてきたりして、よく言えばリラックス、常識的に見れば中々に行儀が悪い。

「それでもすごいよ。」

「うん。大した物だ。」
2人で頷きあう。先程まで涼子さんの高校生のときの同級生、箕郷京子さんの事を話していたのだ。
極度に緊張症の幼馴染である清水先輩との恋物語はハラハラあり、ドキドキありと中々手に汗を握らされた。
涼子さんは中々に話し上手だ。
記憶の中の清水先輩というと涼子さんの同級生、つまり自分から見れば一つ年上でやたらとモテると噂のサッカー部のエースの人という記憶しかない。
だから女の子が苦手な清水先輩や、 コンプレックスから他の女の子と付き合ってしまう清水先輩の話なんかは新鮮で目から鱗だった。
まあ誰でも苦手な物の一つや二つは持っているものなんだろう、とそう思わされる話だった。


「清水先輩というとなんだかすごくモテてたという記憶しかないんだけどなあ・・・」
「皆色々と大変なんだ。恋愛というのは一杯の人に好きだと言われても、一人の人だけを好きだと思っていても結局同じだけの苦労をするんだな。」
そういって涼子さんはにっこりと笑った。笑いながら涼子さんは炬燵の上に物憂げに手を伸ばす。

「涼子さん、その蜜柑何個目?」
よしもう一つ、と炬燵の上から蜜柑を取り出す涼子さんにとがめるように声を掛ける。
む、と涼子さんは手を止める。
僕の計算が正しければ午後1時から3時までの間で涼子さんは既に4個の蜜柑を平らげている。これが5個目だ。
因みに昨日は確か10個くらいを平らげている。段ボール箱一箱買っておいた蜜柑はもう既に残り少ない。
正月休みだからといってあんまり親の仇のように蜜柑ばかり食べるのもどうかと思うが、果物の好きな涼子さんは炬燵に根を下ろすと蜜柑が止まらなくなるらしい。

「体が蜜柑色になるよ。」
「蜜柑はビタミンが豊富だから体に良いんだ。」
返答になっていない言葉を呟きながら涼子さんは蜜柑を手に掴んだ。

部屋のストーブはカンカンと燃えていて、部屋中が暖かい。
物憂げなお正月の夕方。夕食の時間まであと少し。
コンポからはミックジャガーの歌う少し緩めのロックンロール。
こういうだらだらとした時間は案外と過ぎるのが早くて、
だらだらとしているようでいてそれなりに幸せなのだろうと思う。

「そうそう、その後の話だ。匠君、私が高校3年生の時の話なんだけどな。」
ぺりぺりと蜜柑の皮を剥きながら、涼子さんは話し始めた。

@@@@

校門から私の足できっかり542歩。
下駄箱の入り口は校舎からは逆側になっていて野球部とサッカー部が練習するグラウンドを迂回するようにして行かなくてはいけない。
更にスロープ状になっている部分をぐるりと地下一階分降りて、下駄箱に着く。
この学校の一年生はこの下駄箱の所為で大抵一度や二度は遅刻をする。
その上、下駄箱は無駄に広くて電灯が所々切れていて暗くて夕方、
すっと暗くなる時刻なんかは逢魔ヶ時と言う言葉を思い出すくらいにとても怖い。
その代わりと言ってはなんだけれど、人がいないから人目を忍ぶのにはもってこいだ。
放課後にはカップルがこそこそと隅っこに取り付けられているベンチに座って何かを話していたりする。
そして、この学校でラブレターを人目に付かず入れるとするなら、ここしかないのだ。

つまりだから、毎日毎日隣でにらみつけている私の目を避けるようにコソコソとあいつは下駄箱を空けるのだ。

---ばさばさばさ
予定調和のように白いのやらピンク色やらの手紙が落ちる。
いくつかはすのこを潜って冷たい色をしたリノリウムの床に散乱する。
いつもの事だ。慣れている。
そして目の前のこいつは困ったな。と言うような顔をしてそれを拾うと無造作に鞄に突っ込む。

別に手紙と言ってもこいつの下駄箱がポストな訳でもこいつが郵便配達のバイトをしている訳でもない。
どちらかと言うとポストと言うより郵便箱に近い。
あいつの下駄箱には住所があって、何故だかピンク色や白色の手紙がよく舞い降りると言う訳だ。


ふん、と私は顔を逸らして歩き始めた。
ニヤニヤしちゃって。そんな手紙は捨てれば良いのだ。気に入らない。

そもそも第一、何でこんなに異常にもてるのかと言う話なのだ。
奴の風采は別段ジャニーズみたいにカッコ良い訳じゃない。
まあ確かに顔はすっと鼻筋が通って美男子と言えなくもないけれど。
サッカーをやっているからか蟹股で何を着ても似合わない。大体いつもジャージばかり着ている。
それに口下手だし、私にはどちらかというといつもぼんやりとしていて口を半開きにしているようなイメージがある。
それに子供の頃は何をするにも不器用だったし、苛められては私の後ろに隠れて泣いていたりしたのだ。
きゃあきゃあ言っている女の子たちは知らないだろうけれど、こいつは幼稚園の頃、
一緒にお風呂に入った時に水を掛けたら泣いてしまう位に泣き虫だったのだ。
まったくもって情けない男だ。
なんでこんなにもてるのだろう。本当にわからない。


「京子、待ってくれよ。」
慌てて追いかけて来るあいつを振り切るように歩く。
なんでこんなに苛苛とするのか。
大変なばっかりじゃないかと思った。
ただの幼馴染だった時はこんなことは無かった。
勿論ほのかに気にかかってはいたから色々と思い悩んだりもしたけれど、
それでも何であんな奴がそんなにもてるのだろうと首をかしげる方が多かったのだ。

「何を怒ってるんだよ。」

「別に。」
何がサッカーだ。少々上手いくらいで何でそんなにもてるのだ。
大体もてはやす女も女だ。
田村亮子が何十連覇しようとも、レスリングがいくら強くとも男たちは全然ちやほやとしないではないか。
男女差別だ。
少々サッカーが出来る位、何なのだ。

「別にって怒ってるじゃないか。」
「怒ってなんかない!」


そもそも何なのだという話だ。
付き合い始めた。それは良い。
それなのになんで私が後ろ指を刺されなくてはならないのだ。
「清水君も手近なところで我慢したんだぁ。」じゃない!
手近なところで我慢された覚えはまったく無い。
女の子と話せないという奴の泣き顔を知らないからそんな事が言えるのだ。
「ふーん・・・箕郷さん、清水君に付き合って貰ってるんだぁ。」じゃない!
いつからあの泣き虫がそんなに偉くなったのだ。
ずっと一緒にいたから、あいつの事は誰よりも知っているのだ。
昨日今日サッカーの試合を見てきゃあきゃあと叫んだ女が何を言っているのだ。

私は振り向いて叫んだ。

「何よニヤニヤしちゃって!そんなに嬉しいならそっち行っちゃえばいいじゃないか!
いっつもいっつもラブレター貰って、私には何にも言ってくれない癖に!馬鹿ぁ!」

残響が広い下駄箱スペース中にぐわんぐわんとこだまする。
あいつは吃驚した顔をして立ち止まった。
少し悲しそうにぼりぼりと頭を掻いている。

ええい。言った後に後悔するのなら、言わなければ良いんだけれど。


@@@@


夕暮れの光が店内に差し込んでいた。
窓際に掛けられている柱時計はもうすぐ5時を指そうとしている。

「つまり恋人が、愛の言葉をささやいてくれない。」
と、恋する乙女にはそれが不満だった訳だな。と目の前に座っている友人の岸涼子は口にした。
学校帰りのフィッツジェリコには誰がいるかわからないというのに、周り中に聞こえるような大声で。
いつも涼子はてんでそういうことに無頓着だ。
その声の大きさに隣の客に聞こえたかと私は周りを見回す。しっと手を口に当てると涼子は不思議そうになんだ?という顔をしている。
まったく判っていない、と思いながら私は溜息をついた。
どう見ても恋人に甘い言葉をささやいて貰いたがるようなタイプじゃあない。
涼子に相談したのは人選ミスだったかもしれない。

「確かにそういう一面もあるんだけどさ。そう言ってしまうとなんだか自分が我侭を言っているみたいじゃない。」
ふう、と溜息をつく。

「いいじゃないか我侭で。私には恋人はいないけれど、もしいるのであればそう言う事はきちんと言って欲しいと思う。」
「あれ、涼子もそういうこと言って欲しい人?」
涼子の言葉が少し意外で、私は慌てて聞き返した。
どちらかというと岸涼子は独立独歩なタイプで男の子に甘い言葉を吐いて欲しいとかそう云う事を言いそうなタイプじゃあない。
そう思っての言葉だったが、涼子は心外な。という風に目を丸くした。

「当たり前じゃないか、私だって女の子なんだ。もしそういう関係の男性がいれば、恋心は色々と言葉を尽くして語って貰いたい。」
涼子はぼうっと宙を見ながら「君の瞳に恋するまで、僕は死んでいたようなものさ、ベイビーとか言って欲しいな。」
などと物騒な事を呟いている。
堅物と思えばこれだ。中々に掴み所が無い。

「へえ。ふーん。それは匠君にって事?」
ふとからかう種を思いついてニヤニヤとしながら聞いてみた。
匠君と言うのは図書委員の涼子が図書室で声をかけた年下の男の子だ。
真面目そうな風貌をして、図書室でヘッドバンキングをする迷惑な奴だから注意するために声をかけたとか言っていたが真実はどうだか怪しいものだ。
とにかくその声をかける半年前、図書室に変な奴がいるという話をし始めて以降、
美人の癖に男嫌いで浮いた話の一つもなかった涼子はその男の子の話ばかりしている。
変な奴はいつの間にか名前が判明していて事ある毎に匠君が匠君がとそれはそれはかしましい。 寧ろ恋する乙女という形容詞は私よりも涼子の方に似合うのじゃないか。と私は思う。


「む、匠君はそういうのじゃない。」
そう言いながらも涼子はぎくりと体を震わせた。カチャカチャとフォークが皿に当たる。体中に動揺が走っているのは隠し切れていないが、耳まで赤くしなかった所はさすがだ。
「じゃ、どういうのよ。」
「匠君は弟みたいな物だ。別段男女交際をしているわけじゃないのだから関係が無い。それに大体今日は京子が相談があると言ったのであって私の事はどうでも良いじゃないか。」
むむむ、と私達は睨み合う。

「そもそもだ。話は戻るが、清水君は京子になら普通に話せるのだろう?緊張するのは京子以外の女の子だ。そうだとしたら京子に愛の言葉を囁かないのは緊張するからしないからではなく、そもそも清水君の資質にあるんじゃあないか?」

ふん。と目を逸らしながら涼子は中々に耳に痛い正論を言ってきた。
そうなのだ。
気に入らない事に奴は例えばサッカーの話になればワールドカップがどうの、
やれストイコビッチがどうなのビスマルクがどうなのと実に饒舌に話す。
その癖、腹立たしい事にそれ以外の話に関しては途端にああだのうんだのと実に歯切れが悪くなる。


目の前の涼子はふん、と胸を逸らすと又スパゲティーをつつき始めた。
いつの間にか2皿目のスパゲティーもあらかた皿の上から消えてしまっている。
いくらフィッツジェリコのスパゲティーが美味しく、そして相談を掛けた私の奢りだからと言って2皿は食べすぎだ。
指摘するとどうせ私は太らないからとか我慢するのは体に良くないとか理屈を捏ねるのだろうがそれはそれで腹が立つ。

「でも、それだけじゃないかもしれないじゃない。もしかして私の事をそれほど好きじゃあないとか、」

「清水君がか?それはないだろう。」
「でも、前に由香って娘と付き合ったし、もしかしたら」
そんな事は無いとは思う。それでも不安に思うことは不安に思うのだ。
それを吐き出す。 スパゲティー代位は愚痴を聞いて貰わなければ。

すると
「あのな。京子。」
と言って目の前の涼子はカタン。とフォークを置いた。
と言っても食べるのを止めた訳ではない。食べ終わったのだ。

「何を馬鹿な事を言っているんだ。京子と清水君は一度好きだとお互いに確認しあったのだろう?なら大丈夫だ。 心配なんかする事はない。京子が言って欲しい言葉があるならこう言って欲しいと清水君に言えば良い。して欲しい事があるならこうして欲しいと言えばいい。それだけじゃないか。 大体言って欲しい事があって、それを言ってもらえる立場なのにその希望を伝えないで唯待っているなんていうのは贅沢な話だと私は思う。」

それより食後にコーヒーが飲みたいんだけれど、良いだろうか。と、目の前の親友は空になったコップを振りながら言った。

コーヒーまで奢らされては堪らないので拒否の意思表示に自分のお冷を涼子に向かって黙って差し出す。
「そうかなあ。わからないな。」
私は首を捻りながらそう答えた。


@@@@

涼子の言葉はなんとなく判るもののなんとなく腑に落ちず。
次の日も次の日も、あいつがサッカー部の練習だった事を良い事に私は一人で帰った。
いつもなら図書室で帰りを待ったりもするのだが、そんな気分にもなれなかった。


そして週末の金曜日。
授業を終え、私はふらふらと下駄箱に歩いた。
涼子でも誘ってフィッツジェリコで自棄スパゲティーでもと思ったが、
奴は真面目な顔で
「匠君が勉強をするなどと言っているんだ。まったく仕方が無いから数学でも」
云々と嬉しそうに言いだしたのでふん。と言って捨ててきた。
あれからずっと、無性にむしゃくしゃとした気分だった。
部屋の窓は締め切ってカーテンを引いた。あれから一言も話していない。
なんだか何もかもが気に入らない。

私は苛苛とした気分を抱えながら下駄箱の蓋を開いた。
と、中から何かが落ちて足元に当たったのを感じた。

足元をじっと見る。
ほいと持ち上げてみると、小さな封筒に汚い字で「京子へ」と書いてある。
この字は知っている。あいつからだ。ぼうと手紙を見つめた。
練習前に入れていったのだろうか。

----そして。


私はなんだ、こんなものかと思った。
ラブレターを貰うなんてこんな事なんだ。と。

貰ってみるとなんと言う事は無い。
なんだそうか。というようなものだ。
開いてみようとして、その手を止めた。
中に何が書いているかなんて大体想像がつく。
口下手な人間が饒舌に手紙を書けるわけなんてない。

でも。何故だか口元が緩むのを感じた。
ロクに喋れないあいつは何を考えてこれを書いたんだろう。なんて書いてあるんだろう。
あいつはきっと随分頭を絞ってこれを書いたんだろう。
きっと何時間も。週末まで掛かって。

涼子の心配なんかする事はない、と言う言葉を思い出した。

なんだ。あいつはちゃんと私の事を考えてるんじゃないか。
私は笑った。
現金にもなんだかさっぱりとした気持ちになりながら、私は一人で笑った。
手に持った手紙を鞄にしまう。
私が奴からもらった初めてのラブレターは家に帰ってからじっくり読もう。
きっと読むに耐えた物じゃあないだろうけれど。

苛苛していた気持ちがすっと消えていくのを感じた。
そう。何を苛苛としていたのか。
幼馴染だからといって、彼女だからといってあいつの事を好きなほかの女の子より偉いわけなんかじゃない。
私だってあいつにラブレターを渡してきゃあきゃあと騒いでいる皆と一緒じゃないか。
踊らされて、馬鹿みたいに狼狽して少しの事で舞い上がったり大笑いしたりして。
でも先程までの気持ちはどこへやら、今それは何故だかちっとも嫌ではなかった。
涼子の言う通りだ。私だって好きだと言って欲しかったらラブレターを出せば良かったんじゃないか。今度書いてみよう。大好きだって。好きって言ってほしいんだって。

とんとんと靴を履いて、下駄箱の中をもう一度確認する。
うん。残念ながらラブレターは一通だけ。
これからも貰える事は無いかもしれない。
なんて言ったって私の事を好きになったらライバルはあいつなのだ。
でもそれで良いのだ。今度は私の番だ。

昨日までの嫌な気持ちはすっかりと消えて、なんだか私はニコニコとしている様な気がする。
なんて、なんて単純な。呆れ果てる。
でも、そういえば涼子が言っていた。
「君の瞳に恋するまで、僕は死んでいたようなものさ、ベイビーとか言って欲しいな。」

うん。今思うに悪くないじゃないか。中々素敵だ。言われてみたい。
そう思いながら外へと駆け出す。
校庭を眺めると少し日が落ちて黄昏時、それでもまだすかんと抜けたような色の空の下でサッカー部と野球部が練習をしている。

サッカーが上手だなんてとってもカッコいいじゃないか。
うん。馬鹿みたいだ。自分でも思う。
でも、そう思うのは自分が今、十分に幸せだからかもしれない。と私は思った。


☆★

だむぅっと机が叩かれる。籠に入った蜜柑が跳ねる。先程までの怠惰な雰囲気はどこへやら。熱弁である。

「つまりだな、ラブレターの意味が判るか、匠君。清水君はだな。彼女に対して直接的に愛の言葉は囁けなかったかもしれないが、彼なりのやり方で一生懸命に工夫をしたんだ。不器用な形ではあるだろうが。京子は不器用だなんだと文句を言いながらそれがとても嬉しかったんだ。」

いつの間にか昔話はお説教へと形を変えていた。
話の途中から俯いてしまった俺にブンブンと手を振り回しながら話していた涼子さんが何かを言いたげにキッと見下ろしてくる。
いつの間にか手元の蜜柑は食べ終わっている。
うん。最近、涼子さんはロックンロールに例えずとも実に上手い具合にお説教をする術を身に付けてきている。

「京子は嬉しそうだったなぁ。」
最近ラーメンを食べに行ったり、本屋に行ったりといった事ばかりで
あまりロマンチックな努力に欠けていることを涼子さんは言っているのだろう。
確かに手を抜きがちだったかもしれない。

「はい・・。以後気をつけます。」
お説御尤もで御座います。自然頭も垂れる。
今度の日曜日、偶には夜景が綺麗な所とか、可愛い人気者の鼠のいる遊園地なんかはいかがなものだろうか。と脳内でリストアップする。


「経済力だとか、女性に対する理解力とか、最近ではそういうのが男性の魅力みたいに取りざたされているようだけど私はそういうのは判らない。お金は一緒に稼げばいいし、理解しあうのなんて御互いが努力して当たり前だ。そんな事よりだな。」
涼子さんは一つ息をつく。

「美しくいようと努力する事を、女性らしくあろうとする事を努力する女性を嫌いな男性がいないように、きっとロマンチックに振舞われる事が好きじゃない女性なんて、いないんだ。お互いがそうであるべき姿、そういう事を忘れるのは良い事ではないと、私は思う。」

そこまで言って涼子さんは蜜柑をもう一つ手にとると、うん。と言いながら炬燵から立ち上がった。
「さて匠君、行こう。」
手を伸ばしてくる。

「どこへ?」
座り込んだまま問い返すと涼子さんは何を言っているのだと云うような顔をして真っ白になっている窓の方を指差した。
指し示した先を見る。
いつの間にか深と降り続いていた雪はやんでいて、外はからりと晴れていた。
窓の下を見ると先程までの人一人いない雰囲気から一変して近所の子供達だろうか。きゃいきゃいと何か騒いでいる。

「雪が降っているじゃないか。雪だるまを作りに行こう。大きいのを作った方が勝ちだ。」
そして。

匠君は判っていないな、こういうのをロマンチックな誘い方というのだ。
と言って涼子さんはにっこりと笑った。






  
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by obtaining | 2006-01-24 11:13 | document

にっき

いそがしいです

マンソンのキッチンをIHにしてみようか等という野望を持った為、
2chの調理家電板という普段絶対に行かない板に行ってみる・・・

と、

ガス派とIH派で激しく罵り合っていました。
うーん。知らない世界。こんな所にも派閥が。

久々に感じるこの気持ち。

ネッ広。(=゚ω゚)


そういえば初めて感じたネッ広はスカトロAVについて熱く前向きにそして肯定的に語り合う漢達を見た時でした。
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by obtaining | 2006-01-18 19:56 | diary

にっき

結婚おめでとうとたくさんの人に言ってもらいました。

ありがとう。
(=゚ω゚)ノ
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by obtaining | 2006-01-14 00:31 | diary

Document 更新

(=゚ω゚)ノウーニーです。皆さんこんにちは。

とある所で面白いお題を見つけたから徹頭徹尾ケラケラ笑いながら
楽しく書いたんです。(鬼畜系スレッドでそんなもん書くな)

うにさん思ってました。こうなったらいいなって。

ウ「これでこれでこうでさ。」
ウ「ここでこいつがこう言ったのさ。○○・・・ってね。(肩を竦めながらウインク)」

皆「 (≧∇≦)人(≧∇≦) ブヒャヒャヒャヒャ!!」
皆「アーッハッハッハ!!(⌒▽⌒)ノ_彡☆バンバン」
ウーニーの放ったクスリと笑えるエスプリの効いたお洒落なジョークに
場はもうドッカンドッカンと笑いの渦ですよ。

皆「いやーー笑った笑った。さて、じゃあ次は誰のどんな話が来るかな?」
皆「たまには悪くないじゃないか。こういうノリも。」

ウ「!さあ、ここからは皆さんお待ちかね、○○の登場を期待しましょう!」

みたいな。そんな場の繋ぎ的なね。
そんな心がちょっと暖かくなる大人の社交場?
スレッドの趣旨にはちょっと合わないけれど、まあ笑えるからいいや。みたいな?
そんな風になったらいいなって。


そう思ったんです。


だが聞いて欲しい。

俺の思い過ごしかもしれない。
そう思いたい。

しかしだ。

どうもWEB拍手等見る限り
ギャグだと思われていないんじゃなかろうかと思われる節がある。
なんか小声で

「弱小チームのファンってこういう妄想するんだぁ・・・・」
ヒソヒソ(*´・ω・)(・ω・`*)ヤーネー
「かわいそう・・・」

みたいに言われている気がする。

はっきり言っておきますがカープは弱小じゃないです。来年優勝しますし。
最多勝投手とホームラン王を擁し、
監督が変わった事によって気分も新たになったカープが負ける筈が無いです。
つまり、コンプレックスなんか一つもないわけ。
お荷物球団の下りなんかは
「球界の至宝、カープがお荷物だなんて。アハハハハ!」
こんな感じなわけ。そこ頷くとこじゃないです。そこが笑いどころですよ。

そこが笑いどころですよ。


まあそれは置いておいて
イメージ的に

「・・・・・なんだよねーーーー。なーんちゃって!(゚∀゚)エヘヘ」
「なるほど。」
「なるほどなるほど。」
「うんうん。なるほどね。」
「わかるわかる。辛いよな。」

「・・・・・なーんちゃって・・・」

って空気を感じる。

切ない。

ところで昔の話になりますが。
受けた受けないの話になると泥酔(貴子)のピストン(・∀・)ピストン(・∀・)も
ウーニーさん的にはドッカンドッカン受ける予定でした。
予定でしたよ。ぶっちゃけて言いますけど。
結果的にまったく話題にものぼりませんでした。
これもなんとなく
「うんうん。なるほどね。(ちょっと早口)」
っていう感じで受け止められました。
今となっては自分でもどこが面白かったのかさっぱり判りません。

まあもっとがんばりたいという事です。
ちょっと書きたかっただけで言うほど考えてないですが。

しかしもうちょっと判りやすいように笑ってもらえるギャグを書きたい。
そんな風に思いました。
(=つω;)ガンバルヨ

---

ところで。
できるだけ中の人については内緒だぜ!
内緒っつうかなんつうか。
(判る人だけ)

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(=゚ω゚)ノ フルキャストスタジアムで!! 更新

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by obtaining | 2006-01-11 13:30 | document

フルキャストスタジアムで!! 後編

「打ったあああああああああ!!!山崎!今期2度目の満塁、
 サヨナラホームラーン!!レフトスタンド狂喜乱舞!!強い!強すぎます!楽天イーグルス!!!昨年の惨敗は今年への布石だったのか。それとも名将野村効果か。首位をがっちりとキープ。まさかこんなイーグルスを開幕前にいったい誰が予想したでしょうか?負けません!ホークス、ロッテ相手の6連戦をまさかの破竹の6連勝!!」

ハッと目を覚ます。又ソファーの上で寝てしまったらしい。

「ゆ・・・夢。そ、そうだよね。ハハハ。」
なんて都合の良い夢を見たものだろうか。
ゆっくりと頭を振りながら頭を上げた。

ゆかりの目の前にはスポーツ新聞が置かれていた。
その紙上には苦虫を噛み潰したような顔の楽天オーナー、
三木谷氏の顔が写されている。

『3度目の10連敗。野村監督ついに更迭か。後任にはヘッドコーチの松本匡史氏が昇格へ。』

そう。楽天イーグルスは8月にしてすでに首位のソフトバンクホークスに25ゲーム差をつけられて大差の最下位。
既に優勝など望むべくも無いが、今日からの日本ハム3連戦で負ければ自力優勝すら消える。

そうなれば万事休すだ。ルールとしては自力優勝が消えた段階で野球賭博の掛け金は支払わなくてはならない。
無論支払わねばならない一億円などなかった。
どんなに掻き集めたって精精が100万円。今20歳のゆかりにとって、一億円などという金は想像すら出来ない大金だった。

「どうして・・・・。優勝するはずだったのに・・・。」
そう。ゆかりの計算は完璧なはずだった。最初の2ヶ月の負けはしょうがない。しかし他球団を圧倒するエース、岩隈を擁しているのだから野村ID野球が浸透する夏場には大反抗が行われるはずだった。連勝に次ぐ連勝を収め、首位に躍り出るはずだった。それなのに・・・

どこで歯車が狂ってしまったのか、ゆかりには判らなかった。


@@

力なくスポーツ新聞を畳むとゆかりは財布から一枚のメモを取り出した。

「***-****-****」

11桁の携帯番号が書かれているだけのメモ帳の切れ端だった。
バッグから携帯電話を取り出すとゆかりは力なくその番号を押した。

「はい。信藤ゆかりです。はい。ええ、・・・しかし、もう・・・。はい。判っています。宜しくお願いします。」
電話を切った後、ゆかりは一度大きなため息をついた。
そしてもう一度メモリーに入っていた違う所に電話をかけた。

「あ、忠志さんですか。ゆかりです。私、今度引っ越す事にしました。色々と考える事があって。ごめんなさい。あなたと結婚できません。留守電でこんな事を言うなんて酷い女性と思うかもしれないですけど。本当にごめんなさい。もう、連絡してこないで下さい。」

電話を切った後、一分ほどその態勢のままゆかりはじっと動かなかった。
かすかに肩を震わせて、少しだけ涙をこぼした。

恋人の忠志とは昨年、フルキャストスタジアム宮城で知り合った。
楽天対広島の一戦だった。
彼は楽天ファンの友人に連れられてレフトスタンドに来ていたものの宮城県民にも拘らず広島東洋カープのファンだったのだ。
居心地悪そうに広島の攻撃の時には小さくガッツポーズをして、楽天の攻撃の時にはビールを啜っていた。

たまたま隣り合わせた。ただそれだけの縁だった。

でもゆかりは一目で恋に落ちた。初めての恋だった。
「広島の・・・ファンなんですか?」
勇気を出してそう問いかけたゆかりに忠志はにっこりと笑いかけて答えてくれた。
「ええ。赤色が好きなんです。」

「広島と楽天って・・・似てますよね。三木谷オーナーは若いけど・・・きっと年を取ったら広島の松田オーナーみたいに頑固で、そしてお金を出さなくって、それで首を傾げるような監督人事をして。」

「ゆかりさん・・・だっけ?良い所を見てるね。僕もちょうどそう思ってたんだよ。」

「そ、それに楽天と広島って赤色な所も一緒。楽天の方がくすんだ色だけど・・・。」

そこからもう二人に言葉はいらなかった。ゆっくりと見つめあい、そして唇を交わした。広島の前田選手が放ったホームランが綺麗なカーブを描いてライトスタンドに吸い込まれていく。

スタジアムを絶望が覆う中、ゆかりにはそれがなんだか2人を祝福するアーチのようにも感じられた。決して幸せとはいえない今までの人生だったけれど、私は今、フルキャストスタジアム宮城の中で一番幸せだ。と、ゆかりは思ったのだ。


ゆっくりと携帯の中の忠志からもらったメールを削除しながらゆかりはそんな事を思い出して、涙を零した。

「今日は巨人相手に8-3で負けました。でも大竹投手が6つも三振を取ったんですよ!」
「今日はヤクルト相手に4-2で負けました。4点で抑えるなんて、中継ぎ陣が整備されてきた証拠です!」
「今日は阪神相手に15-4で負けました。ミッキーが可愛かったです。いつか市民球場に君と行きたいです。」

一つ一つが幸せな忠志との思い出だった。
いつもいつも前向きで、決してへこたれない忠志が好きだった。
すぐに気落ちしてしまう自分が嫌で、そしていつでも明るい忠志が眩しかった。
ずっと一緒にいたかった。

でももう一緒にはいられない。
迷惑をかけるわけにはいかなかった。
「私達は一年で監督を変えてしまう三木谷オーナーと、どれだけ負けても監督を変えない松田オーナーみたいなものだったのかも知れない。最初は似ていると思った。堅実なあなたと夢を見ていた私・・・きっと、違ったんです。」
そう思いながらゆかりは最後のメールをうった。
携帯のメモリーの一番上にあった忠志の番号を消して、それからもう一度、少しだけ泣いた。


『さっきの留守電、急にごめんなさい。
 忠志さん、良い人を見つけて幸せになってください。
 あなたと過ごした一年間、とっても幸せでした。
 市民球場、行ってみたかったです。
 私は体力がないから、スクワットみたいな応援は出来なかったかもしれなかったけど。
 市民電車に乗って、市民球場に行って、その後広島城に行ったり、
 宮島様にお参りしたり。夢みたい。
 でも、もうあなたと一緒にはいられません。
 忠志さんとクラッチと撮った写真、宝物にします。
 もう私の事は忘れて下さい。
 ゆかり。』

@@

「支払いを・・・・今年の勝者に肩代わりしてもらう。という事かね。」
「今年の勝者は・・・オリックス・・・だが。」

「はい・・・」
ゆかりは唇を噛み締めながらそう答えた。
今年の初め、楽天の優勝を信じて扉を叩いたこの部屋は、希望に彩られているように思えた。
しかし今は薄暗い、気味の悪い部屋にしか思えなかった。

「ははは。やっぱりオリックスだったろう?だからそう言ったんだ。」
ゆかりの隣に座っている男が馴れ馴れしくゆかりの肩を抱きながらそう答えた。

「まあ、ホークスもロッテも下馬評だけは高かったけどね。結局はこれだよ。これ。」
そう言って指で丸を作るとげひゃげひゃと下卑た笑いをあげる。
普通にしていると若作りにも見えるがそうやって笑うと目じりに皺が寄って相応の年齢に見えた。

「まさか清原が50本も打つとはね。負けたよ。」
「谷選手のなんだか吹っ切れたようなプレイも見事だった。」
ホークスやロッテを応援していた連中から次々と声が飛ぶ。
満足そうに頷きながらそれを聞くと、オリックスを推したその金融業の男はもっともらしく咳払いをした。

「まあ、私位の野球通、になると判るんですよ。清原選手は実績のある選手ですからね。巨人での鬱憤をね。こう晴らすようなプレイをしてくれるとね。」

何を言っている。一度も球場に応援になんか行っていない癖に。そう思いながらゆかりはその男を睨み付けた。
「まあ、女の子には難しいでしょうな。こういう裏の裏、を読むような野球観戦はね。」
睨み付けるゆかりを馬鹿にしたような目で見ながら男はそう言った。
部屋に笑いが広がる。


「いやー私も楽天は無いと思っていましたよ。楽天は。」
「いや、論外でしょう。日ハムはねえ。あるかもしれないですけどねえ。」
「パリーグは5チームですよ。5チーム。」
「ははは。それは酷い。」

口々に部屋の中から聞こえる声が自分を切り刻むようにゆかりには感じられた。

「ねえオリックスを推したあんた。そこの楽天を推した娘に何をしてもらうんだ?」
「一億円ポンと渡すとは豪気だからなあ。お嬢ちゃん頑張って働かないとなぁ。」
「家でじっくりといたぶるつもりか?」
更にある男の一言で、部屋の中に下卑た笑いが広がる。

「勿論一億円分の働きはしてもらいますよ。一年間はこの娘、私の物ですから。」
金融業の男は頷きながら指をチッチッと動かして部屋を見回した。

「まあまあ、そうですね。とりあえず、今年の始めに私達を驚かせてくれたお詫びだけはしてもらいましょうか。」
そう言いながら金融業の男はゆかりの耳元に口を近づけた。

「良いか。ここで服を脱いで、下着姿で楽天が優勝する等と妄言を吐いて申し訳ございませんでした。と言うんだ。」
「そ、そんな。」
「自業自得なんだよ。あんたは愚かにも楽天を推して賭けに負けた。俺は賢くも賭けに勝った。自分でもわかってるだろう?」
無茶苦茶な理論だ。
それでもこの男に従わなくてはならなかった。
一億円を肩代わりしてもらう契約の内容にはそう書かれていた。
・質問されたら肯定でのみ返答する事。質問に質問で返してはいけない。
「はい・・・」
ぎゅっと唇を噛み締める。
「口答えした罰だ。素っ裸で言え。」
「・・・はい。」
かすかに肩を震わせながらゆかりは頷いた。


@@

「・・・楽天イーグルスが優勝するだなどと申し上げて、大変失礼致しました。」

既にゆかりの上着は取り払われ、白いワイシャツに下半身は下着のみという格好にさせられている。
そしてこの台詞はもう既に何度口にしただろうか。
一枚服を脱ぐたびになんども口に出すように強制されている。

「どうして勝つと思ったんだ?」

「・・・野村監督が」

「ほら、さっさと上もぬいじまえ!胸ばっかでかくしてるから頭に考えがまわらねえんだ!」
「のむらぁ?あいつはもう駄目だよ!ヤクルトだってまぐれだったみたいなもんだ。」
そんな事はない!叫びたかった。名将・野村監督がいて、
エース岩隈がいて、キャプテン磯部が打って・・・
先程から何度も同じ事を言われ、そのたびに罵倒されていた。
心が壊れそうだ。そう思いながらゆかりはブラウスに手をやった。
ボタンをはずすのが面倒で、見ている奴らを喜ばせるだろう事が嫌でゆっくりと胸元のボタンだけをはずし、首から脱ぐ。
部屋の中にどよめきがよぎるのを感じた。
忠志にも見せた事のない、下着姿だ。そこを下卑た視線で部屋中から見られている。
しゃがんでしまいたい。そう思いながら。もう一度ぎゅっと唇を噛み締めてゆかりは耐えた。

「・・・楽天イーグルスが優勝するだなどと申し上げて、大変失礼致しました。」
「ほら、いいからブラジャーはずせ!」
「そうだそうだ。おっぱい見せて、しおらしく謝れ!それが謝罪ってもんだ!」
「おーー。ゆかりちゃんスタイルいいなあ。両手と首から上だけが日に焼けてて他は真っ白じゃねえか!」
キッとにらみつけそうになる自分を何とか律してゆかりはブラジャーのホックに手を回した。

「くっ・・・」
思わず噛み締めた唇から声が漏れる。
ゆっくりと、ゆかりはブラジャーを外した。

「おお、良い形じゃないか!色もピンク色で。あんまり使ってないのか?おい!」
「おい、くるっと回ってみろ。くるっと。」
部屋中の目が食い入るように自分の乳房に注がれているのを感じた。
思わず後ずさるとぐっと強く腕を握られたのを感じた。
金融業の男だった。

「そうだ。頭を下げて言え、」
そういってからその男は唇を耳元に近づけてきた。

「楽天イーグルスが優勝するだなどと申し上げて、大変失礼致しました。
 楽天イーグルスと、それから広島東洋カープは今後絶対に優勝する事などありません。
 赤色の球団なんて気持ち悪いだけです。とな。」

「・・・・え?」
男の言葉が脳内で何度かジャンプするように聞こえた。

---この男は何を言っているのだろう?

「な、、、なんで?」
楽天は、私が応援していたからしかたない。広島、広島は。

「お前の事は調べさせてもらった。楽天ファンにカープファンの恋人か。下らない。」

「い・・・いや。」
二人が出合ったフルキャストスタジアム宮城。

「野球って言うのはな。所詮金何だよ金。お荷物球団が勝てる訳ないんだよ!ほら、言うんだ。楽天とカープはお荷物球団だと言え!!」
ぐっと手に力が篭る。
忠志さんが愛したカープ。私が愛したイーグルス。赤色の素敵な2つの球団。
素敵なマスコットキャラのクラッチとスライリー。

「いや、いやああああああああああ--------!!!!」
頭を振り乱してしゃがみこんで、ゆかりは叫んだ。

@@

「そこまでにしてあげたまえ。」
しゃがみこんだゆかりの上を、温かい言葉が過ぎていった。

「ん?なんだよおやっさん・・あんた、野球に興味がなくなったんじゃないのか?大体今回の賭けにあんた、参加していないじゃないか。 はは。それにあんたは僕の味方の筈だ。近鉄バッファローズはオリックスバッファローズになったんだからね。近鉄バッファローズの応援団長はオリックスバッファローズの応援団長って事だろう?残念ながら色は青だけどね。」
「だまらっしゃい!!!」

---火を噴くような言葉だった。

口を尖らせたような言い方をした金融業の男は戦意喪失したように黙り込んだ。

「大阪近鉄バッファローズは死んではおらん!戦意を高める誇り高い赤色は楽天イーグルスにしっかりと受け継がれておる!広島カープの赤色もそうだ!戦後、広島の町の人々が懸命に頑張る赤色のカープにどれだけ心、力付けてもらったか。貴様ら若造には判るまい!」

「団長。もう、もういいの。私が、楽天が勝つだなんて夢を見たから・・・」

「もういい。ゆかりさん。辛かったな。辛かったろう。後は私に任せるといい。」
ゆかりが必死で掴んだ袖を団長はそっと外してゆかりの裸体の上に上着を掛けた。
そして立ち上がると、ゆっくりと金融業の男の方に振り返った。
ゆかりにはそれが、火を噴く猛牛の赤色の目に見えた。

「大阪近鉄バファローズはもう無い。なくなってしまったチームだ。それはしょうがない。でもな若造。大阪に住むバファローズファンが全てオリックスのファンになったなどと思うなよ。大阪に住むバファローズファン、いや、全国のファンはオリックスだけじゃない。少なくとも楽天にもその夢を託した。問題はあろう。様々にあるだろう。昨日まで近鉄、今日からはオリックス。昨日まで近鉄、今日からは楽天。素直に応援などできるほうがおかしいわ。それでも、ファンは悩み、決断を下すんじゃ!赤色の誇りを楽天に見出すか、バファローズの名をオリックスに見出すか。その決断はその決断を下すだけで誇り高く、どちらが正しいなどという事は無い!その誇りを楽天に見出し、必死で応援したこの少女を馬鹿になどするんじゃない!」

聞こえるのは人々の息遣い位。
既に部屋はしんと静まり返っていた。
雄牛のような勢いの初老の男に、誰一人反論する人間はいなかった。



@@

「団長さん、本当にいいの?」

「もう団長じゃないわい。」

「でも・・・・。」

「金なら腐るほどある。気にする事など無い。それよりほら、早く彼氏の所にいってやりい。」

「本当にありがとうございます。」
ゆかりは深々と頭を下げた。

「何々。同じ野球を愛する仲間ってだけだ。私も、ゆかりさんも、そしてゆかりさんの彼氏もな。」
そう言って団長はゆかりに向かってウインクをしてみせた。
それから少し笑って口を開いた。
「ゆかりさん、又球場で会おう。」

「え?それって・・・」

「まだまだ老け込むような年じゃないわい。ドームじゃない球場も又乙なもんじゃ。」

ゆかりはぺこりと頭を下げてそれから走り出した。
しばらく行った後、くるりと振り返ると精一杯伸び上がって手を振りながら団長に向かって叫んだ。
「フルキャストスタジアムで!!」


おわり



  
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by obtaining | 2006-01-10 09:47 | document

フルキャストスタジアムで!! 前編

「俺は・・・やはり本命・・ソフトバンクホークスだな。
 城島不在といえども破壊力のある打撃に勝利を確実に掴む豪華な先発陣。
 2年連続の苦杯を舐めているからこそ、今年はホークスだ。」

「だからお前は甘いんだ。戦力をキチンと分析してみれば今年もロッテという結論は揺るがない。安定しただ投手陣に派手さこそ無いが1番から9番まで相手チームから点をもぎ取れる打撃。昨年一度限りとみていたら痛い目に・・遭うぜ?」

「オリックスバッファローズ・・・だな。清原、ローズ、中村、谷のいる豪華過ぎる打撃陣。失点を上回る破壊力満点の打撃力野球で他球団を圧倒してやるさ。」

「それで・・・おねーちゃんはどうだい?」

「私は・・・楽天イーグルスの優勝に賭けるわ。」
口々にそれぞれが贔屓する球団についての意見が部屋の中に飛び交う中、
ほの暗い部屋の中に響いた声に人々は思わず腰を浮かせた。
注目を浴びたのはその声が場にそぐわない若い女性の物だった事、そしてそこに凛とした強い意志を感じられた事もあっただろう。
しかし多くの人々は彼女の言葉の内容に強く反応した。

「ほ、本気か?」
「嘘だろう。楽天イーグルスは無いよ。」
「おじょうちゃんは昨年の成績を知っているのかい?」
少女といっても良いような彼女に心配そうな声よりもむしろ嘲笑のような言葉が浴びせられる。
しかし彼女は周りを見回すと、ぐいと胸を張った。

「冗談なんかじゃないわ。
 エース岩隈、そして一場。更に山崎武司、関川らのベテラン。
 そして名将・・野村とそのDNAを受け継ぐ男・・カツノリ。
 私は昨年40試合以上県営宮城球場・・・
 いえ、フルキャストスタジアム宮城に通って確信を持ったわ。
 今年優勝するのは、楽天イーグルスよ。」

「それは・・・無茶だ。」
自信に満ちた彼女の声とは裏腹に部屋中にため息が漏れる。

「宜しいのですか?掛け金は・・・1億。見た所20歳にもなっていないあなたに払える額じゃないでしょう。」

心配そうにそう話しかけてきた男にも彼女はキッと強い視線を向けた。
「私は負けない。もし負けたなら何をしてでも払ってみせます。」

「ゆかりさん!よしなさい!」

しかしその時、部屋の隅から叫び声が飛んだ。
思わず皆が声の方に振り向く。
そこには初老の男性が両手をワナワナと震わせながら立ち尽くしていた。

「おやっさん・・」
声を上げたその老人はこの高級野球賭博グループの中で最も年齢が高く皆からおやっさんと呼ばれ親しまれている人物だった。

「な・・・何故私の名を・・・。」

「私はあなたを知っている。ゆかりさん、あなたも私の顔を・・・知っているはずだ。」
ゆかりと呼ばれたその若い娘は少し眉を寄せながら確かめるように初老の男の顔を覗いた。

「あ・・・・あなたは!」

「思い出したか。そう。あんたとは何度か話をした事もあるな。」

ゆかりと呼ばれたその娘は口を押さえながら咽ぶように叫んだ。
「だ・・・団長!」

「そう。栄光ある近鉄バッファローズ、最後の応援団長じゃ。
 あんたはよく大阪ドームに応援に来てくれていた娘だろう。
 応援しにくい大阪ドーム、セリーグ、阪神の台頭による話題性の低下。応援団の高齢化。
 そんな中、若い女性にも関わらずあんたはよく球場に来てくれていたな。一生懸命声を張り上げて応援していた。よく覚えている。
 あんたは覚えていなくとも、私はあんたの事を良く覚えているよ。」
初老の男はそう言ってにっこりと笑った。

「事情を・・・話してくれるな。」

老人の言葉にがっくりと肩を落とすと、ゆかりはぽつぽつと話し始めた。
子供の頃、近鉄バッファローズの試合を父親と見に来た事、
その父が母以外の女と逃げた事。
母の再婚相手との家庭内での不和。そして彼女を襲う家庭内暴力。
そんな凄惨な家庭環境の中、ゆかりに力をくれたのは
岩隈、中村、そして礒部。
そんな凛々しく、そして雄雄しく精一杯戦う近鉄バッファローズの選手達だった事。
その気持ちは球団が楽天イーグルスになっても変わりはなかった事。

「だから私は単身、仙台に来たわ。
 そして楽天イーグルス公式チアリーダーズ
 「東北ゴールデンエンジェルス」のオーディションを受けた。
 そしてそれに落ちたの。」

「何故だ!あんたほどの美形だったら東北ゴールデンエンジェルスに入ることくらい・・・」

「残念ながら私はダンスが・・踊れないの。」
咽びながら彼女は続ける。
部屋はしんと静まり返った。
もしかして彼女を襲った家庭内暴力が、彼女からダンスを奪ったのでは・・・。

「リズム感が・・無かったの。」
彼女は顔を上げた。

「だから私は楽天イーグルスの優勝に賭けるわ。
 年間シートを、そして年間10万円の
 「スーパーインターネットクラブ」の会員を続けるためにも!」
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by obtaining | 2006-01-09 18:32 | document

あけまして

おめでとうございます。(=゚ω゚)ノ
まあ無事明けたってだけでめでたいですね。

本年度前半部分は鬼のように仕事がたまっているので中々更新できません。
後結婚します引っ越しますイエー。
マンション買ったのと結婚式と仕事が重なってテンヤワンヤ。
ということで4~5月くらいまでは短編は書きそうですが
というか書いてますが長編は無理っぽい。
お正月SS、6割がた書いといて残りが書けません。どうしよう。
今年は短編を書きつつ香織さんの頭を撫でて西メガに掛かりたいものです。
どうなる事やら。
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by obtaining | 2006-01-04 11:11 | diary