[おやすみ] *閑話・須永和加葉

[おやすみ] *閑話・須永和加葉

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そりゃあ、確かに彼は地味だ。

背は低いし、痩せっぽちだしそのくせ声はがらがらだしスポーツは出来ないし
かと言って勉強ができるかといったら精々10人並みって所。
性格だって好きな事にはのめり込むみたいだけれど決してタフではないし
食べ物の好き嫌いも多い。
どちらかというとシャープな顔立ちだとは思うけれども
それだってよくよく見ればといった所。ジャニーズ系とは言いがたい。
ニキビは最近ちょっとましになってきたけれどそれでも部分によってはクレーター並みに酷い。

つまり、あんまりいけてない気がする。
けれど私の好きな人だから、他人にあげるわけにはいかない。
私の幼馴染の山下準の事だ。

彼を好きな子がもしいるんだったら、メリットっていったらライバルがいない。
そんな位しかないんじゃない。まあいないだろうけど。
なんて口の悪い友達なんかは言う。
私の好きな人が彼だなんて事は誰にも伝えていないから
そういう時は私は聞こえなかった振りをする。

でも私が彼を好きである事、それは自分の気持ちだから誰が何と言おうと間違いない。

ユーモアのセンスはあると思うし、それに顔だってまあ、
たしかにジャニーズとは言いがたいんだけれども
ニキビが直ればそこそこカッコいい部類に入るんじゃないだろうか。
ちょっと拗ねた様なものの言い方もほら、かわいい気がする。
それに、優柔不断だけれど誰にでもとても優しい。

そして何よりも私の事を判ってくれている、と、そう思う。

実は、私は別に小さい頃から彼が好きだったわけじゃない。
幼稚園と小学校の低学年まではそれこそ毎日のように遊んだし、
親同士も仲が良いからお稽古事も一緒に通った。

小学校高学年からはそれぞれ同性の友達が増えたから、
段々と疎遠になって中学校にはいった頃には幼馴染で、
時々話をする友達っていうような関係になっていた。
私はバスケットに夢中で、時々準の顔を見る度にニキビを直す為にもっと小まめに顔を洗えば良いのに。
とその位に思うけれど口にはしない、
つまり準は恋愛感情とはまるで関係のない、ただの幼馴染だった。

でも高校1年の時にその気持ちが変わってしまった。
今、彼に持っている気持ちはただの幼馴染のその時のものとは違うし、
そしてその気持ちは、中学生の時にクラスの男子に初めてラブレターを貰って
ちょっと意識した時とも違う気がしている。
それは何かというと、能動的な気持ちだって事だ。
何かをしてあげたいとか一緒にいたいとかそういう気持ちだ。
もしかしたら今、私は本当に初恋をしているのかもしれない。そうであれば良いと思う。
私が掴み取りたい何かが、初恋であり、彼であれば良いと思う。

そんな風に思っているのだ。

自分で言うのもなんだけれど健気である気がする。私。

それなのに奴はなんだか最近私にとても冷たく、
そしてその上涼子ちゃんにめろめろのようなそぶりを見せている。
涼子ちゃんが準に秋波を送るわけがないのに馬鹿な男だ。
まあ、そんな事は関係ない。
涼子ちゃんは涼子ちゃんだ。
とにかく私は腹立たしい。

自慢じゃないけれど私だってそこそこもてるのだ。
最近だって靴箱にラブレターが入っていたし、
映画に行こうと誘われることだって多いし、
男の子から電話が掛かってくる事だって多いのだ。
胸は小さいけれど部活を引退して少し(ほんの少し)体重が増えたら
B(ブラによってはC)になったし、
元々色白だし、お母さんは美人だから将来だって有望なはずだ。多分。
涼子ちゃん程じゃないにしたって馬鹿にしたものじゃないはずなのだ。きっと。

だったらきちんと私の気持ちに気が付くべきであるし、
気が付いたのであれば気が付いたと言うべきであるし、
気が付いたのであれば快くOKと返事を出すべきだ。
それなのに奴は今日、涼子ちゃんにめろめろの様子を隠そうともせず、
それどころかこの2年間、私の気持ちにも気が付かず、
ふらふらとしていて私の方を見ない。

私は不安になるし、悲しくなるし、いらいらするし、腹立たしい事、この上ないのだ。

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バレンタインで連載したものです。閑話
  
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by obtaining | 2008-03-14 20:48 | document

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