Self-study (PERSONA3)

Self-study
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生徒を代表する生徒会長として全ての面において模範で無ければならない、と思う。
弛まぬ自己研鑽は学生の義務であり、
しかしそれだけでなく正しい友人関係と遊びも又、学生にとって必要なものだと思う。

弛まぬ自己研鑽は簡単だ。手本がある。
偉大な先達の記述した本、論文を読み、彼らの示す通りに学べば良い。
彼らの道程をその本の中に尋ね、美学を理解し自らの血肉とする作業は自己研鑽と呼ぶ言葉のイメージよりも遥かに薫り高く、甘美だ。

しかし正しい友人関係と遊び、というのがどういうものを指すのか。
こちらに関しては私は甚だ自信が無かった。
私にとってはこちらの方が遥かに難しい。
教師が言う、本に書いてある正しい友人関係、は現状の生徒達の生活と乖離している場合が多いし、また現実の方をその理想に近づけるのは私一人の力では難しいからだ。
正しい友人関係。これが私には上手く定義できない。

しかし友人がいないわけでは、ない。
只、友人と遊ぶ。ということ自体に気後れがあるのだ。


私にとって楽しいことが、複数で行って楽しいことだろうか。
学術書を読み、ディベートする事が万人にとって余暇であるならばこれ以上の事は無いのだけれど、同世代の皆はディスコやカラオケ、買物、学校帰りの買い食い、映画等に興味を持っているようだ

・・・映画。

そうか。映画は悪くない。
ディスコや買い食い、悪所と呼ばれている場所へ行くことは
生徒会長という立場上行くわけには行くまい。

しかし映画館は特に問題ないのではないか。
校則にも禁止されていないし、教師と学友が週末に見た映画の事を語り合っていたりする風景も良く見られる。

映画の中には優れた文学作品に勝るとも劣らないものも多い事であるし、
あまり騒がしい事が嫌いな私でも座って見ている分には問題が無い。
お互いが楽しめるのではないか。

そういえば、と傍らに置いてあった今日の新聞を捲る。
記憶を頼りにスポーツ面にある下段の広告欄を捲るとそこには
「全米が泣いた今話題のラブロマンス!【恋のジャックフロスト】」
「22歳のチャンピオンに奴は再度挑む!【ロッキー8 ~81歳の挑戦~】」
の二つの映画の宣伝が並んでいた。

ーーーー

「ちょっと待て。そういうつもりで言ったんじゃない。誤解するな。」
そういうつもりで言ったんじゃない。と再度口が勝手に動く。

「私はただ、あの3人が疲れすぎているんじゃないかなと。そう思っただけだ。」
うん。その調子だ。体育館の壇上を思い出せば良い。
生徒会長として皆に話しかけるようにだ。

「だから、今日はタルタロスへの参加は止しにしたい。とそう言う事だ。」

目の前の奴は一言も発しない。

「しかし、先達である我々が寮に根を生やしている様では奴らもタルタロスへ行かない、
とは言い出しにくいだろう。と私は考えている。」

「優しい事だな。」
漸く口を開いたと思ったらこれだ。

「私だって鬼じゃない。それに、明彦だって適度な休息がトレーニングに有効である事くらい知っているだろう?」
そういうと、明彦は痛い所を突かれたといった顔をした。

「それはそうだ。が。」

「ゆかりも順平もキタローも嬉しい事に責任感は強い。見た目より。だからこそ我々が正しく導いてやる事が必要なんだ。体だけでなく、精神にも休息が必要だ。」

「尤もだ。で?」

息を深く吸う。
「私にも経験がある。殊更相手が意識していなくとも、年上の人間が近くにいるというのはそれだけで緊張するものだ。
でだ。
我々は、今夜所用があるという事にし、寮を離れる事としたい。
私がいなければタルタロスに行くことは出来ないからな。」

「なるほど。言いたい事は判った。じゃあ俺はロードワークでm」
そう言って目の前の明彦は治り切っていない右腕をぐるんぐるんと回す。
判っていない。

「ちょっと待て。怪我が治るまでは安静だ。」

「怪我をしたのは腕だ。ロードワークは関係ないだろ。」
馬鹿か。

「私は奴らを休ませてやりたいと言ったんだ。
我々がこれ見よがしに訓練していたらのんびりと寮で過ごすことも儘ならないだろう。」

「何を言いたいんだ。」

「我々が率先して休息を取らなければ後輩も落ち着いて休息を取ることなど出来ない、と言う事だ。」

「そうか?」

「そういう所が明彦の気の至らない所だ。皆、そういう物だ。」
そう言うと奴はむうとうなった。
明彦は意外と素直で御しやすいところがある。


「しかし急に休息を取るといってもな。誰か開いてる奴は・・・」

「映画のチケットがある。」
内ポケットに入れておいたチケット2枚をバッと差し出す。
表紙には「恋のジャックフロスト」と書いてある。
生徒会の何名かに確認したところ、甘く切ないラブロマンスが泣ける、
この春お勧めの映画だと鑑賞した者の評判も芳しかった。

しかし、明彦は開きかけた携帯と私の手にある映画のチケットを見て固まった。
「こ、これは。」

「急に休息といっても明彦も私も予定など立てにくいと思ってだ。
桐条グループに手配させた。」

「それは判ったが。これを俺がか?」
何が不満だというのだ。



「無論私も随行する。」

「こ、これにか。せめて、ロッキー8にしないか。ロッキーも悪くないぞ。」
80を超えた爺さんが若者を殴りつける映画なんて嫌。

「残念だな。このチケットしかないんだ。」

「嘘をつけ。桐条グループに言えばs」

「残念だな。このチケットしかない。」
だからあんな80を超えた爺さんが筋骨隆々としたヘビー級チャンピオンを殴り飛ばす映画は嫌だ。

どうせ遊ぶのならどきどきとして、「アイ ラブ ユー」などと囁かれるようなのを見る方が良いじゃないか。
そうだろう?
後輩達のために仕方なく取る休息とはいえ、
私は甘く切ないラブロマンスという言葉に魅力を感じていないほど、堅物ではないのだ。




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「気持ちワルッ」

「どーしたん?ゆかりっち」

「さっき桐条先輩、出てったじゃん。その時すっごい笑顔で今日は我々も休むから岳羽もゆっくり休め。だって。」

「優しいじゃん。」

「わかってないなあ。あの桐条先輩だよ。あの!なんかすっごいお洒落してたし。」

「デートかな。」

「そんな訳無いじゃん。あの桐条先輩だよ。きっと何か企んでるんだよ。」

「・・・なあ、ゆかりっち。もしかして桐条先輩の事嫌い?」

「・・・そんな事無いわよ。まあ、休めるのはいいんだけどさ。
ねえ、キタロー君。ねえ、聞いてる?
大体さあキタロー君あの水着みたいなの私に着ろって言ってから毎日毎日タルタロスに行こうってキタロー君が大体、
それに疲労困憊になっても帰してくれないしねえ,聞いてる?ねえ。」





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by obtaining | 2007-04-22 02:44 | document

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