雪炬燵熱弁

<雪炬燵熱弁>


「へえ、それで二人は付き合い始めたんだ。確か清水先輩って大学サッカーでも有名だったもんね。」
差し向かいで炬燵に入って話す。お正月特有の贅沢とも言える。
窓の外では昨晩から深々と雪が降っていて町並みは凍りついたように物音一つしない。
そんな中、暖色に彩られた涼子さんの部屋の中では珍しくローリングストーンズなんかが掛かっていたりする。

「うん。だいぶ前に清水君が大学のリーグ戦で得点王を取ったとか京子は言っていたな。残念ながらJリーグ入りは適わなかったらしいけれど。」
炬燵に座り込み、ぎりぎり座れる位まで下半身を炬燵に突っ込んだ態勢の涼子さんは蜜柑を一切れ口の中に放り込みながらもむもむと話している。
話の途中で炬燵の中から脚を蹴飛ばしてきたりして、よく言えばリラックス、常識的に見れば中々に行儀が悪い。

「それでもすごいよ。」

「うん。大した物だ。」
2人で頷きあう。先程まで涼子さんの高校生のときの同級生、箕郷京子さんの事を話していたのだ。
極度に緊張症の幼馴染である清水先輩との恋物語はハラハラあり、ドキドキありと中々手に汗を握らされた。
涼子さんは中々に話し上手だ。
記憶の中の清水先輩というと涼子さんの同級生、つまり自分から見れば一つ年上でやたらとモテると噂のサッカー部のエースの人という記憶しかない。
だから女の子が苦手な清水先輩や、 コンプレックスから他の女の子と付き合ってしまう清水先輩の話なんかは新鮮で目から鱗だった。
まあ誰でも苦手な物の一つや二つは持っているものなんだろう、とそう思わされる話だった。


「清水先輩というとなんだかすごくモテてたという記憶しかないんだけどなあ・・・」
「皆色々と大変なんだ。恋愛というのは一杯の人に好きだと言われても、一人の人だけを好きだと思っていても結局同じだけの苦労をするんだな。」
そういって涼子さんはにっこりと笑った。笑いながら涼子さんは炬燵の上に物憂げに手を伸ばす。

「涼子さん、その蜜柑何個目?」
よしもう一つ、と炬燵の上から蜜柑を取り出す涼子さんにとがめるように声を掛ける。
む、と涼子さんは手を止める。
僕の計算が正しければ午後1時から3時までの間で涼子さんは既に4個の蜜柑を平らげている。これが5個目だ。
因みに昨日は確か10個くらいを平らげている。段ボール箱一箱買っておいた蜜柑はもう既に残り少ない。
正月休みだからといってあんまり親の仇のように蜜柑ばかり食べるのもどうかと思うが、果物の好きな涼子さんは炬燵に根を下ろすと蜜柑が止まらなくなるらしい。

「体が蜜柑色になるよ。」
「蜜柑はビタミンが豊富だから体に良いんだ。」
返答になっていない言葉を呟きながら涼子さんは蜜柑を手に掴んだ。

部屋のストーブはカンカンと燃えていて、部屋中が暖かい。
物憂げなお正月の夕方。夕食の時間まであと少し。
コンポからはミックジャガーの歌う少し緩めのロックンロール。
こういうだらだらとした時間は案外と過ぎるのが早くて、
だらだらとしているようでいてそれなりに幸せなのだろうと思う。

「そうそう、その後の話だ。匠君、私が高校3年生の時の話なんだけどな。」
ぺりぺりと蜜柑の皮を剥きながら、涼子さんは話し始めた。

@@@@

校門から私の足できっかり542歩。
下駄箱の入り口は校舎からは逆側になっていて野球部とサッカー部が練習するグラウンドを迂回するようにして行かなくてはいけない。
更にスロープ状になっている部分をぐるりと地下一階分降りて、下駄箱に着く。
この学校の一年生はこの下駄箱の所為で大抵一度や二度は遅刻をする。
その上、下駄箱は無駄に広くて電灯が所々切れていて暗くて夕方、
すっと暗くなる時刻なんかは逢魔ヶ時と言う言葉を思い出すくらいにとても怖い。
その代わりと言ってはなんだけれど、人がいないから人目を忍ぶのにはもってこいだ。
放課後にはカップルがこそこそと隅っこに取り付けられているベンチに座って何かを話していたりする。
そして、この学校でラブレターを人目に付かず入れるとするなら、ここしかないのだ。

つまりだから、毎日毎日隣でにらみつけている私の目を避けるようにコソコソとあいつは下駄箱を空けるのだ。

---ばさばさばさ
予定調和のように白いのやらピンク色やらの手紙が落ちる。
いくつかはすのこを潜って冷たい色をしたリノリウムの床に散乱する。
いつもの事だ。慣れている。
そして目の前のこいつは困ったな。と言うような顔をしてそれを拾うと無造作に鞄に突っ込む。

別に手紙と言ってもこいつの下駄箱がポストな訳でもこいつが郵便配達のバイトをしている訳でもない。
どちらかと言うとポストと言うより郵便箱に近い。
あいつの下駄箱には住所があって、何故だかピンク色や白色の手紙がよく舞い降りると言う訳だ。


ふん、と私は顔を逸らして歩き始めた。
ニヤニヤしちゃって。そんな手紙は捨てれば良いのだ。気に入らない。

そもそも第一、何でこんなに異常にもてるのかと言う話なのだ。
奴の風采は別段ジャニーズみたいにカッコ良い訳じゃない。
まあ確かに顔はすっと鼻筋が通って美男子と言えなくもないけれど。
サッカーをやっているからか蟹股で何を着ても似合わない。大体いつもジャージばかり着ている。
それに口下手だし、私にはどちらかというといつもぼんやりとしていて口を半開きにしているようなイメージがある。
それに子供の頃は何をするにも不器用だったし、苛められては私の後ろに隠れて泣いていたりしたのだ。
きゃあきゃあ言っている女の子たちは知らないだろうけれど、こいつは幼稚園の頃、
一緒にお風呂に入った時に水を掛けたら泣いてしまう位に泣き虫だったのだ。
まったくもって情けない男だ。
なんでこんなにもてるのだろう。本当にわからない。


「京子、待ってくれよ。」
慌てて追いかけて来るあいつを振り切るように歩く。
なんでこんなに苛苛とするのか。
大変なばっかりじゃないかと思った。
ただの幼馴染だった時はこんなことは無かった。
勿論ほのかに気にかかってはいたから色々と思い悩んだりもしたけれど、
それでも何であんな奴がそんなにもてるのだろうと首をかしげる方が多かったのだ。

「何を怒ってるんだよ。」

「別に。」
何がサッカーだ。少々上手いくらいで何でそんなにもてるのだ。
大体もてはやす女も女だ。
田村亮子が何十連覇しようとも、レスリングがいくら強くとも男たちは全然ちやほやとしないではないか。
男女差別だ。
少々サッカーが出来る位、何なのだ。

「別にって怒ってるじゃないか。」
「怒ってなんかない!」


そもそも何なのだという話だ。
付き合い始めた。それは良い。
それなのになんで私が後ろ指を刺されなくてはならないのだ。
「清水君も手近なところで我慢したんだぁ。」じゃない!
手近なところで我慢された覚えはまったく無い。
女の子と話せないという奴の泣き顔を知らないからそんな事が言えるのだ。
「ふーん・・・箕郷さん、清水君に付き合って貰ってるんだぁ。」じゃない!
いつからあの泣き虫がそんなに偉くなったのだ。
ずっと一緒にいたから、あいつの事は誰よりも知っているのだ。
昨日今日サッカーの試合を見てきゃあきゃあと叫んだ女が何を言っているのだ。

私は振り向いて叫んだ。

「何よニヤニヤしちゃって!そんなに嬉しいならそっち行っちゃえばいいじゃないか!
いっつもいっつもラブレター貰って、私には何にも言ってくれない癖に!馬鹿ぁ!」

残響が広い下駄箱スペース中にぐわんぐわんとこだまする。
あいつは吃驚した顔をして立ち止まった。
少し悲しそうにぼりぼりと頭を掻いている。

ええい。言った後に後悔するのなら、言わなければ良いんだけれど。


@@@@


夕暮れの光が店内に差し込んでいた。
窓際に掛けられている柱時計はもうすぐ5時を指そうとしている。

「つまり恋人が、愛の言葉をささやいてくれない。」
と、恋する乙女にはそれが不満だった訳だな。と目の前に座っている友人の岸涼子は口にした。
学校帰りのフィッツジェリコには誰がいるかわからないというのに、周り中に聞こえるような大声で。
いつも涼子はてんでそういうことに無頓着だ。
その声の大きさに隣の客に聞こえたかと私は周りを見回す。しっと手を口に当てると涼子は不思議そうになんだ?という顔をしている。
まったく判っていない、と思いながら私は溜息をついた。
どう見ても恋人に甘い言葉をささやいて貰いたがるようなタイプじゃあない。
涼子に相談したのは人選ミスだったかもしれない。

「確かにそういう一面もあるんだけどさ。そう言ってしまうとなんだか自分が我侭を言っているみたいじゃない。」
ふう、と溜息をつく。

「いいじゃないか我侭で。私には恋人はいないけれど、もしいるのであればそう言う事はきちんと言って欲しいと思う。」
「あれ、涼子もそういうこと言って欲しい人?」
涼子の言葉が少し意外で、私は慌てて聞き返した。
どちらかというと岸涼子は独立独歩なタイプで男の子に甘い言葉を吐いて欲しいとかそう云う事を言いそうなタイプじゃあない。
そう思っての言葉だったが、涼子は心外な。という風に目を丸くした。

「当たり前じゃないか、私だって女の子なんだ。もしそういう関係の男性がいれば、恋心は色々と言葉を尽くして語って貰いたい。」
涼子はぼうっと宙を見ながら「君の瞳に恋するまで、僕は死んでいたようなものさ、ベイビーとか言って欲しいな。」
などと物騒な事を呟いている。
堅物と思えばこれだ。中々に掴み所が無い。

「へえ。ふーん。それは匠君にって事?」
ふとからかう種を思いついてニヤニヤとしながら聞いてみた。
匠君と言うのは図書委員の涼子が図書室で声をかけた年下の男の子だ。
真面目そうな風貌をして、図書室でヘッドバンキングをする迷惑な奴だから注意するために声をかけたとか言っていたが真実はどうだか怪しいものだ。
とにかくその声をかける半年前、図書室に変な奴がいるという話をし始めて以降、
美人の癖に男嫌いで浮いた話の一つもなかった涼子はその男の子の話ばかりしている。
変な奴はいつの間にか名前が判明していて事ある毎に匠君が匠君がとそれはそれはかしましい。 寧ろ恋する乙女という形容詞は私よりも涼子の方に似合うのじゃないか。と私は思う。


「む、匠君はそういうのじゃない。」
そう言いながらも涼子はぎくりと体を震わせた。カチャカチャとフォークが皿に当たる。体中に動揺が走っているのは隠し切れていないが、耳まで赤くしなかった所はさすがだ。
「じゃ、どういうのよ。」
「匠君は弟みたいな物だ。別段男女交際をしているわけじゃないのだから関係が無い。それに大体今日は京子が相談があると言ったのであって私の事はどうでも良いじゃないか。」
むむむ、と私達は睨み合う。

「そもそもだ。話は戻るが、清水君は京子になら普通に話せるのだろう?緊張するのは京子以外の女の子だ。そうだとしたら京子に愛の言葉を囁かないのは緊張するからしないからではなく、そもそも清水君の資質にあるんじゃあないか?」

ふん。と目を逸らしながら涼子は中々に耳に痛い正論を言ってきた。
そうなのだ。
気に入らない事に奴は例えばサッカーの話になればワールドカップがどうの、
やれストイコビッチがどうなのビスマルクがどうなのと実に饒舌に話す。
その癖、腹立たしい事にそれ以外の話に関しては途端にああだのうんだのと実に歯切れが悪くなる。


目の前の涼子はふん、と胸を逸らすと又スパゲティーをつつき始めた。
いつの間にか2皿目のスパゲティーもあらかた皿の上から消えてしまっている。
いくらフィッツジェリコのスパゲティーが美味しく、そして相談を掛けた私の奢りだからと言って2皿は食べすぎだ。
指摘するとどうせ私は太らないからとか我慢するのは体に良くないとか理屈を捏ねるのだろうがそれはそれで腹が立つ。

「でも、それだけじゃないかもしれないじゃない。もしかして私の事をそれほど好きじゃあないとか、」

「清水君がか?それはないだろう。」
「でも、前に由香って娘と付き合ったし、もしかしたら」
そんな事は無いとは思う。それでも不安に思うことは不安に思うのだ。
それを吐き出す。 スパゲティー代位は愚痴を聞いて貰わなければ。

すると
「あのな。京子。」
と言って目の前の涼子はカタン。とフォークを置いた。
と言っても食べるのを止めた訳ではない。食べ終わったのだ。

「何を馬鹿な事を言っているんだ。京子と清水君は一度好きだとお互いに確認しあったのだろう?なら大丈夫だ。 心配なんかする事はない。京子が言って欲しい言葉があるならこう言って欲しいと清水君に言えば良い。して欲しい事があるならこうして欲しいと言えばいい。それだけじゃないか。 大体言って欲しい事があって、それを言ってもらえる立場なのにその希望を伝えないで唯待っているなんていうのは贅沢な話だと私は思う。」

それより食後にコーヒーが飲みたいんだけれど、良いだろうか。と、目の前の親友は空になったコップを振りながら言った。

コーヒーまで奢らされては堪らないので拒否の意思表示に自分のお冷を涼子に向かって黙って差し出す。
「そうかなあ。わからないな。」
私は首を捻りながらそう答えた。


@@@@

涼子の言葉はなんとなく判るもののなんとなく腑に落ちず。
次の日も次の日も、あいつがサッカー部の練習だった事を良い事に私は一人で帰った。
いつもなら図書室で帰りを待ったりもするのだが、そんな気分にもなれなかった。


そして週末の金曜日。
授業を終え、私はふらふらと下駄箱に歩いた。
涼子でも誘ってフィッツジェリコで自棄スパゲティーでもと思ったが、
奴は真面目な顔で
「匠君が勉強をするなどと言っているんだ。まったく仕方が無いから数学でも」
云々と嬉しそうに言いだしたのでふん。と言って捨ててきた。
あれからずっと、無性にむしゃくしゃとした気分だった。
部屋の窓は締め切ってカーテンを引いた。あれから一言も話していない。
なんだか何もかもが気に入らない。

私は苛苛とした気分を抱えながら下駄箱の蓋を開いた。
と、中から何かが落ちて足元に当たったのを感じた。

足元をじっと見る。
ほいと持ち上げてみると、小さな封筒に汚い字で「京子へ」と書いてある。
この字は知っている。あいつからだ。ぼうと手紙を見つめた。
練習前に入れていったのだろうか。

----そして。


私はなんだ、こんなものかと思った。
ラブレターを貰うなんてこんな事なんだ。と。

貰ってみるとなんと言う事は無い。
なんだそうか。というようなものだ。
開いてみようとして、その手を止めた。
中に何が書いているかなんて大体想像がつく。
口下手な人間が饒舌に手紙を書けるわけなんてない。

でも。何故だか口元が緩むのを感じた。
ロクに喋れないあいつは何を考えてこれを書いたんだろう。なんて書いてあるんだろう。
あいつはきっと随分頭を絞ってこれを書いたんだろう。
きっと何時間も。週末まで掛かって。

涼子の心配なんかする事はない、と言う言葉を思い出した。

なんだ。あいつはちゃんと私の事を考えてるんじゃないか。
私は笑った。
現金にもなんだかさっぱりとした気持ちになりながら、私は一人で笑った。
手に持った手紙を鞄にしまう。
私が奴からもらった初めてのラブレターは家に帰ってからじっくり読もう。
きっと読むに耐えた物じゃあないだろうけれど。

苛苛していた気持ちがすっと消えていくのを感じた。
そう。何を苛苛としていたのか。
幼馴染だからといって、彼女だからといってあいつの事を好きなほかの女の子より偉いわけなんかじゃない。
私だってあいつにラブレターを渡してきゃあきゃあと騒いでいる皆と一緒じゃないか。
踊らされて、馬鹿みたいに狼狽して少しの事で舞い上がったり大笑いしたりして。
でも先程までの気持ちはどこへやら、今それは何故だかちっとも嫌ではなかった。
涼子の言う通りだ。私だって好きだと言って欲しかったらラブレターを出せば良かったんじゃないか。今度書いてみよう。大好きだって。好きって言ってほしいんだって。

とんとんと靴を履いて、下駄箱の中をもう一度確認する。
うん。残念ながらラブレターは一通だけ。
これからも貰える事は無いかもしれない。
なんて言ったって私の事を好きになったらライバルはあいつなのだ。
でもそれで良いのだ。今度は私の番だ。

昨日までの嫌な気持ちはすっかりと消えて、なんだか私はニコニコとしている様な気がする。
なんて、なんて単純な。呆れ果てる。
でも、そういえば涼子が言っていた。
「君の瞳に恋するまで、僕は死んでいたようなものさ、ベイビーとか言って欲しいな。」

うん。今思うに悪くないじゃないか。中々素敵だ。言われてみたい。
そう思いながら外へと駆け出す。
校庭を眺めると少し日が落ちて黄昏時、それでもまだすかんと抜けたような色の空の下でサッカー部と野球部が練習をしている。

サッカーが上手だなんてとってもカッコいいじゃないか。
うん。馬鹿みたいだ。自分でも思う。
でも、そう思うのは自分が今、十分に幸せだからかもしれない。と私は思った。


☆★

だむぅっと机が叩かれる。籠に入った蜜柑が跳ねる。先程までの怠惰な雰囲気はどこへやら。熱弁である。

「つまりだな、ラブレターの意味が判るか、匠君。清水君はだな。彼女に対して直接的に愛の言葉は囁けなかったかもしれないが、彼なりのやり方で一生懸命に工夫をしたんだ。不器用な形ではあるだろうが。京子は不器用だなんだと文句を言いながらそれがとても嬉しかったんだ。」

いつの間にか昔話はお説教へと形を変えていた。
話の途中から俯いてしまった俺にブンブンと手を振り回しながら話していた涼子さんが何かを言いたげにキッと見下ろしてくる。
いつの間にか手元の蜜柑は食べ終わっている。
うん。最近、涼子さんはロックンロールに例えずとも実に上手い具合にお説教をする術を身に付けてきている。

「京子は嬉しそうだったなぁ。」
最近ラーメンを食べに行ったり、本屋に行ったりといった事ばかりで
あまりロマンチックな努力に欠けていることを涼子さんは言っているのだろう。
確かに手を抜きがちだったかもしれない。

「はい・・。以後気をつけます。」
お説御尤もで御座います。自然頭も垂れる。
今度の日曜日、偶には夜景が綺麗な所とか、可愛い人気者の鼠のいる遊園地なんかはいかがなものだろうか。と脳内でリストアップする。


「経済力だとか、女性に対する理解力とか、最近ではそういうのが男性の魅力みたいに取りざたされているようだけど私はそういうのは判らない。お金は一緒に稼げばいいし、理解しあうのなんて御互いが努力して当たり前だ。そんな事よりだな。」
涼子さんは一つ息をつく。

「美しくいようと努力する事を、女性らしくあろうとする事を努力する女性を嫌いな男性がいないように、きっとロマンチックに振舞われる事が好きじゃない女性なんて、いないんだ。お互いがそうであるべき姿、そういう事を忘れるのは良い事ではないと、私は思う。」

そこまで言って涼子さんは蜜柑をもう一つ手にとると、うん。と言いながら炬燵から立ち上がった。
「さて匠君、行こう。」
手を伸ばしてくる。

「どこへ?」
座り込んだまま問い返すと涼子さんは何を言っているのだと云うような顔をして真っ白になっている窓の方を指差した。
指し示した先を見る。
いつの間にか深と降り続いていた雪はやんでいて、外はからりと晴れていた。
窓の下を見ると先程までの人一人いない雰囲気から一変して近所の子供達だろうか。きゃいきゃいと何か騒いでいる。

「雪が降っているじゃないか。雪だるまを作りに行こう。大きいのを作った方が勝ちだ。」
そして。

匠君は判っていないな、こういうのをロマンチックな誘い方というのだ。
と言って涼子さんはにっこりと笑った。






  
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by obtaining | 2006-01-24 11:13 | document

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