Truc Aiの続き その1

「痛くなかった?」
後ろから伸びて来た手が私のお尻を撫でる。

ええと、と言いよどむ。
痛いのは痛いんだけど。ううん。そう言うと傷つくかなあ。
痛くなかった?という聞き方は的外れですよ。
と思いつつ上手く返答が思いつかなくて、ぽんと頭に浮かんだ言葉を口に出す。

「えぇっと、素敵、だったよ。」

今度は向こうがええと、と言いよどんでいる。
ふふふ。勝った。と思う。
と、その瞬間、横合いから声が掛かる。

「痛いのが良いんじゃないですか。もっと痛くしても良い位です。
主人様はお仕置きの時に気を使われすぎるのが良くない所です。
もっとこう、びしっと。ばしっと。無慈悲に。です。」

私のお尻に置かれていた手が離れる。
私の後ろでちゅっと何かが吸われる粘着質な音が響く。

あ、こら。秋乃め。良い雰囲気だったのに。


振り返ると上半身だけメイド服を脱いで裸になった秋乃が、主人様の胸元に舌を這わせている。

「もう。」
と言うと、こっちを見て悪戯っぽく笑いかけて来る。
秋乃はスレンダーな身体を主人様に絡みつけるようにしながら真っ白で形が良い胸を主人様のお腹に押し付けた格好で、
主人様の胸元から首筋に掛けて丹念に舌を這わせている。
「もう。今年は私の番なのに。」
もう一度言うと、今度は主人様が笑った。
私より一つ年上の主人様だ。

もう一度真っ赤に腫れ上がったお尻を撫でて欲しくて、
スカートだけを脱いで上はメイド服、下半身は裸という格好の私は膝立ちの格好でゆっくりと主人様の方へ向かう。

キスしようか、それとも秋乃と一緒になって体中嘗め回してあげようか。
と迷う。

@@

いや実際問題のところ、自分で言うのもなんだけれども。
本来私はこんなにいやらしい女の子ではない。
自意識過剰と言われるかもしれないが、どちらかというと本来はお堅いタイプだ。
女学生時代を振り返れば振るようなと言っても過言ではない回数申し込まれているデートのお誘いを片っ端から断ったのは、
メイドの仕事があったから時間が取れなかったというのが主な理由の一つではあるけれど、正直言って男が怖かったというのが大きい。

越智家のような所でメイドをしていると普段主人様以外の男性と触れ合うことなど物理的に無いし、主人様は主人様で元々男という対象ではなかった。
子供の頃からの付き合いでもあり、主人様の事は年上だけれどどちらかと言うと可愛い弟のように思っていたからだ。
つまり男というものに触れ合う機会が無いのだから、無論あまり話した事もなく、したがってデートに誘われてもどうして良いのか判らないという次第だ。

挙句の果て越智家にはそれこそ学生時代には私などよりよっぽどもてた秋乃(大学出たての新人教師にプロポーズまでされたという伝説が残っている)がいて、
そのくせこれまたその全てを袖にしてきたというので参考にはならないし、
なによりも和子さんが目を光らせているから下手に誘いに乗ったりして後でばれるとこれまた怖い。

そんな無理な事や、怖い事をするくらいなら、貞操を守った方がよっぽどマシだろう。
というやや消極的かもしれないけれど近年の女学生にしては真面目な理由で正しく生きてきたつもりだ。
それにどちらかと言うとそういう事に悩むよりも運動をしている方が好きだった事でもあるし。
つまりそういう訳で当時、二年位前までは私は男性の性欲に関して基本的な知識は殆ど無かった

だからこんな事になったのはひとえに秋乃の所為だ。と、私はそう思う。
うん。きっとそうだ。あとご主人様の所為だ。きっと。

@@
きっかけはこんな感じだった。
2年前、私が16歳の時だ。
つまり主人様は17歳で、秋乃は19歳で学校を卒業したばかりだった。

とある晴れた秋の日で、越智家の広い庭にある楓の木と銀杏の木が綺麗に紅葉に染まっていた。
私はいつものように学友達とソフトボールをしてから家に帰り、屋敷の皆にただいま。と挨拶をした。

ここで通常であれば学校から帰ったらメイドの仕事が始まるわけだ。

しかしその日は暇だった。

何故かというと他でもない。
主人様付きのメイドである私や秋乃の仕事は主に主人様の側にいるという事が多い。
子供の頃はひがな一日一緒に遊んだり勉強をしたものだが、長じて主人様が思春期を迎えるという時期になってから後は、
中々ずっと一緒にいるという訳にはいかなくなって来たのだ。
主人様が家督を継がれ、仕事をされるようになればまた話は別になるのだが、
その頃は主人様も学生で、更に言えば1人の時間を好んでいるようだった。
と云う事で、その頃の私や秋乃の主人様に関する仕事といえば食事のお相手やお風呂のお手伝いなんかに限定されていて、
それ以外の時間は主に他のメイドと一緒になって掃除や、細々とした仕事なんかをしていたのだ。

しかしながらそれぞれの仕事にはそれぞれの担当者がいる訳で、その人たちの仕事を全部取るわけにもゆかず。
その頃私や秋乃はそれなりに暇を持て余し、
それこそ普通の女学生のように自分の部屋で本を読んでいるなんて事も多かった。

その日もそんな具合でメイド服に着替えたは良いもののどこに行っても手伝えるような仕事はなく、
部屋に戻って学校の勉強でもしようかしら。と自分の部屋に戻りながらぼんやりと考えていたのだ。

私の部屋と秋乃の部屋は仕事の都合上、他のメイド達の部屋とは棟ごと離れている。
つまり、主人様つきなので主人様の近くにいる必要があり、
この為に私と秋乃の部屋は主人様の部屋の真向かいにある部屋を使わせてもらっている。
部屋の前に来た所、主人様の部屋からは明かりが漏れており、部屋にいらっしゃるのだな。とぼう、と考えた。

通常、主人様に「ただいま。向かいにいるから何かあったら呼んでね。」と挨拶をする所で、
(まあ無論こんな言い方は秋乃以外のメイドがいない時に限られるけれども。)
その日もそうしようと思ってドアをノックしようとした所できゅい、と私は誰かに襟首を掴まれたのだ。

@@

びっくりして振り向くとそこにはなんだかやたらと真剣な顔をした秋乃がいた。
秋乃はすらりと背が高いから、こちらが見上げる形となる。
秋乃は一房だけ綺麗に三つ編みにした髪を弄りながらなんだか難しい顔をしていた。
そして、なんだか奇妙な格好をしていた。
奇妙な格好をしていたというよりも、目がなんだか違和感を訴えてくるような、そんな感じだった。
いつものメイド服を着ているように見えるのだけれど、ぱっと見たところ何か違和感がある。

はて、と思った瞬間、その違和感の元に気が付いて、私は声を潜めながら叫んだ。

「ちょっと!それ、私の予備のメイド服じゃない!」
しいっと秋乃が唇に指をあてる。
こっちはそれどころではない。良く見てみれば秋乃は目も当てられないような姿なのだ。
私より背の高い秋乃が私の体型に丁度合わせたメイド服を着るとどうなるか。
スカートは太腿の真ん中位までしかない。
ミニスカートとも言えない長さで立っていれば問題ないだろうが、
そもそもふわりと浮くように作られたスカートだ。
この長さでは座れば思いきり下着が見えてしまうだろう。
上半身は更に酷い。
かなり悔しい事だが、私と秋乃では背だけでなく、胸の大きさにもやや微妙に差がある。
16歳のその頃は私だってもう少しすれば良い感じに育つ筈と思っていたが、
それから2年経ってもその差は縮まっていないどころかやや開いてすらいる。
まあいい。
兎に角、その時秋乃は胸の第3ボタンまで開いて、胸の谷間が丸見えの格好だったのだ。
どう考えてもサイズの合っていないメイド服姿。丈が短い所為で両脇からはお腹も見えそうになっている。
つまりどう見ても痴女だ。
秋乃はどちらかというと着物が似合うような涼やかな顔立ちな物だから余計にアンバランスに見える。


「どうしたの?秋乃、気でも違ったの?」

そう聞くと、秋乃は怖いような、なんだか泣きそうな顔をしながら私に向かってこう言った。
「ちょっと良い?私の部屋に来て欲しいの。」
と。

@@

秋乃は私を部屋に連れ込み、自分はさっさとベッドの上に座り込むと両手で顔を覆った。そして思い切り溜息まで吐いた。

「なんなのよ。ていうか、服返してよ。伸びるじゃない。」
主に胸の部分が延びそうで、スカートのウエストはあまり伸びなさそうな所がやたらと腹立たしい、などと考えながら言うと、
秋乃は私の言葉には答えず、顔を上げながら絶望的な声を出した。

「鈴子、これから私、大事な事聞くよ。良い?正直に答えてね。」
「な、なに?ていうかまずその格好の説明をしてよ。」
あまりにも真に迫った物言いなので、一瞬詰まりながら私は答えた。

「いいから、こっちの方が先。鈴子、あなた、主人様に身体を触られたこと、ある?」
「・・・」
秋乃の言った事があまりに予想外で私は一瞬固まった。
主人様が、あの主人様が身体を触る?
そりゃ、昔から、その、普通に触れ合ったりする事はあるし、どちらかというと距離感は近いし、
子供の頃は結構べたべたと抱っこしたりした気がするけれどつまり、秋乃の言っている事はそう言うことじゃないだろう。
つまり、そういう意味で、触るって事だ。
ええと、ある意図を持って、こう、触ったりするってことでしょう?
「あ、あ、ある訳無いでしょう!そんな事!」
と、私は叫んだ。

「しっ!静かに!」

「静かにするわけ無いでしょう!主人様がそんな事する訳無いじゃない!何馬鹿なこと言ってるのよ!」
そう思いきり怒鳴ったのだけれど、秋乃ははあ、と肩を落としてくしゃくしゃと頭を掻いた。

「そう…若しかしたら胸の小さい子供みたいなのが好みなのかも、と思ったのだけれど。それも違うみたいね。」
「・・・良く判らないけど、私に喧嘩売ってる事だけは良く判った。いいわよ買うよ私。」
腕を捲り上げる。

「それ所じゃないわよ。ああ・・・もう・・・どうしたら。」
悲嘆にくれたように首を振る。

「何?何なの?」
さっぱりと要領を得ないまま、問い詰めるようにそう言うと、秋乃はこう言った。
「ああ・・・駄目だぁ…もしかしたら、主人様、男色だったりするのかしら。だったらもうお手上げ。」
そう言ってがっくりと肩を落とす。

「はあ?何言ってるの?」
と私は答えるしかなかった。



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by obtaining | 2009-10-05 17:17 | document

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